概要
二人で海に来た。
※当台本はキャラクターの性別変更不可
- 所要時間:約10分
- 人数:女性2
- ジャンル:
登場人物
- 内海 桜: うつみ さくら
- 戸波 香:となみ かおる
本編
SE 穏やかな波の音。
香:あ、あった!
桜:あった?
香:ほら。
桜:・・・・・・綺麗。
香:なんかさ、アレだね。アレみたいだね。
桜:(小さく笑って)どれ?
香:小指の、爪?
桜:こわ。香、剥がしたことある?
香:いやネイルチップとかね?
桜:あー
SE 波の音
香:この時期って、あんま落ちて無いんだね。桜貝。
桜:ね。
香:いつでもあるのかと思ったわ。
桜:残念。
香:この1枚に免じてもろて
桜:しかたないな
香:・・・・・・諦めてくれる?
桜:・・・・・・。
香:約束したよ。ひとつでも見つかったら、諦めるって。
桜:・・・・・・約束なんかしなきゃ良かった。
香:知ってたから賭けたんでしょ。この時期に、桜貝は拾えないって。
桜:・・・・・・。
香:ずるいね。
桜:てへ。
香:ごまかすな。
桜:・・・・・・。
香:桜? どこいくの?
桜:靴脱ぐだけ。
SE 砂を踏む音
桜:つめた。
香:そりゃあ、海開き前だしね。
桜:・・・・・・指の間、気持ちいい
香:あんま行くとスカート濡れるよ
桜:・・・・・・きれいなピンクと、ブルー。
香:(はっとして)桜、桜。
SE ばしゃん、と水音
桜:・・・・・・香?
香:・・・・・・行き過ぎ。上ばっか見てるから。
桜:濡れるよ?
香:良いよ。
桜:香が風邪ひいちゃう。
香:良いよ。
桜:えぇ・・・・・・
香:それ以上、行かないで。
桜:・・・・・・離して。
香:約束したよ。
桜:・・・・・・残念。
(香は桜を抱きしめる。)
SE 波の音
桜:ねえ、海のいい香りがする。
香:そう? 磯臭くない?
桜:うん。ナトリウムが飽和した匂い
香:ナトリウム? 塩のこと?
桜:海底に溜まってる。壊れた細胞が。
香:・・・・・・
桜:私も、透明な、細胞膜になって、その香りに包まれながら、漂いたい。
香:・・・・・・たまに桜が、何言ってんのかわからない。
桜:(小さく笑う)分かろうとしないで。
香:分かりたいんだけどな。
桜:分かられてたまるか。
香:分かりたいよ。
桜:(穏やかに)やめて
香:教えてよ
桜:・・・・・・香のそういう、傲慢なところ。好きだよ。
香:好きって言う時のトーンじゃないじゃん。
SE 波の音
桜:そう?
香:うん。乾いてる。
桜:じゃあ、やってみて。
香:・・・・・・なにを?
桜:どういうトーンで言うのが正解?
香:・・・・・・。
桜:言えるでしょ? 正しい湿度で。
香:・・・・・・桜のそういう、意地悪なところ、好きだよ。
桜:(楽しげ)嘘。
香:嘘じゃない。
桜:(楽しげ)嘘だ!
香:なんで嘘だと思うの。
桜:本当は嫌いでしょ?
香:・・・・・・嫌いじゃないよ。
桜:好きだったら、私が嫌がること、しないはずだよ?
香:・・・・・・意地悪なところが、好きだって言ったんだよ。あってるでしょ。日本語的には。
桜:そういうトーンだった?
香:・・・・・・そういうトーンだった。
桜:そうかなぁ。
香:桜、戻ろう。賭けは私の勝ち。
桜:・・・・・・残念。
SE ばしゃばしゃと水音
香:ひー。どうしよ、どうすんのこれ。
桜:・・・・・・。
香:マジで、着替えとかないよ。近くにユニクロあるかな。
SE パキ、と貝を割る音
SE 波の音
香:あ、古着屋あるじゃん。桜、服買って帰ろ。
桜:香。
香:何。
桜:・・・・・・香ってさ。
香:何?
桜:酷いね。
香:は?
桜:残酷。覚悟もないくせに。拾わないで。
香:(苦笑)分かんないよ、何言ってるか。
桜:あんたのエゴで、私は死に続けるんだよ。
香:そうだよ。私のエゴであんたは生き続けるの。
桜:最後まで面倒見らんないでしょ。
香:・・・・・・桜。
桜:私みたいなやつが、近くにいたら、幸せになれないんだよ。
香:そうだね。
桜:・・・・・・すこしは戸惑えよな。
香:でもあんたがそばに居る不幸せのほうが、マシかな。
桜:最悪。なにそれ。
香:不幸になろう、二人で。
SE 波の音
香:私じゃダメ?
桜:・・・・・・うん。
香:そっか。
桜:・・・・・・傷ついた?
香:傷つかないよ。
桜:傷ついてよ。
香:傷つかないんだなあ。
桜:そういう鈍感なところ、嫌い。
香:鈍感じゃなくてさ。
桜:じゃあ何。
香:桜から与えられるものでは傷つかないって決めたから。
桜:・・・・・・
香:そんな、桜貝の縁程度の鋭さじゃねぇー。
桜:嫌い。嫌い嫌い嫌い
香:好きになって。好きになってよ。きっと楽だよ?
桜:私のことをひとっつもわからないあんたなんか好きにならない。
香:じゃあ教えてよ。
桜:教えない。
香:教えてくれるまで待つ。
桜:待てないでしょ。
香:んー。
桜:何年待てる?
香:嫌われたくないんだけどなぁ。
桜:何年待てるって聞いてるの。
香:(真顔で)こじ開けられたい?
桜:(怯み)
香:そっちのほうがいい?
桜:・・・・・・
香:自分で開けないもんね、桜は。
桜:・・・・・・
香:いいよ、お好みで。言ってみな。嫌いじゃないだろ。こういうの。
桜:嫌い。
香:私はどっちでもいいよ。百年待つのも、こじ開けるのも、楽しめる。
桜:・・・・・・
香:教えて? 思ってること。
桜:・・・・・・あんたには、責任がある。
香:うん。
桜:今日、私を、抱きしめた、責任が、あるよ。
香:うん。
桜:私はずっと、海の淵にいる。ナトリウムの香りに包まれて。戻る気はない。
香:うん。
桜:意味わかる?
香:わかるよ。
桜:ほんとに分かってる?
香:わかってるよ。
桜:適切に返して。
香:その海の淵で、ピンクを探す。小瓶に集めていっぱいにする。私はピンクの小瓶を抱いて、明けない夜に眠る。
桜:・・・・・・
香:どや?
桜:・・・・・・なにそれ。
香:ねー、もう頭疲れた、いい加減諦めよーよ。
桜:ふん!(遠ざかる)
香:あっ、まって、靴履きな!
桜:(振り返って叫び) 地獄だよ!この先!
香:いいよ、一緒に居よう!
桜:ヤダ!(走る)
香:こら、裸足でっ! 待ってよー! 桜ー!
2025.06.09.
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