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裂雲の翼『#1それは生まれたての隼の羽ばたき』【♂2:♀3】25分

概要

飛空艇コンテストレースに挑戦する飛行士エミリアと、整備士ルディアス。見た目を偽って、名前を偽って、それでも空艇士ギルドへ入らねばならない理由。
それは、冒険への欲。

※【伝声管】コップとか使うと楽しいかもしれません。おすすめは桃缶とかタンブラーといった金属製のもの。

  • 所要時間:約30分
  • 人数:5
    比率 2:3
  • ジャンル:ファンタジー、スチームパンク、冒険、ジュブナイル

登場人物


※キャラクター詳細は裂雲の翼トップページをご確認ください。

  • エミリア
       猪突猛進ガール。飛行士。
  • ルディアス
    紳士で気弱。整備士。
  • アネット
       貴族のお嬢様。航空士。
  • ギルド長
    でっかいおっさん。またはお兄さん。
  • 受付嬢
    できる女。

本編

■嵐の中、飛空艇内

エミリア:良い風ねぇええ! 飛びがいがあるぅ!

ルディアス:(伝声管)大嵐だってば! 上空、五時の方向、二機接近!

エミリア:了解、振り切る!

ルディアス:(伝声管) まっすぐ飛んじゃダメだ、同じ紋章が見える!

エミリア:挟み撃ち狙いね。 オッケー。

エミリア:(気づく)前方、十一時方向、積乱雲確認!

ルディアス:(伝声管) 左から大きく迂回しよう!

エミリア:いや、右から詰める!

ルディアス:(伝声管)右は危険だ!

ルディアス:「雲の裾(すそ)」に乗って距離を取ったほうがいい!

エミリア:今なら行ける! 速度上げて!

ルディアス:(伝声管) エマ! ああもう!  
左舷(さげん)エンジン圧力上昇。浮遊石へのパワー供給三十パーセント。右舷(うげん)噴射タイミング教えて!

エミリア:捕まってなさいルディ! おもぉぉかじぃいっぱああい!

ルディアス:(伝声管)ま、まって! 石炭炊かないとっ、上昇間に合わないっ!

エミリア:待たない!

ルディアス:(伝声管)うぁあああああ!

■ゴール地点

   拍手と歓声。

エミリア:ふっふふーん! 狂乱の風乗りたぁ~あたしのことよ。

ルディアス:強引なんだってばぁ……。

エミリア:勝ったからいいじゃない。

ルディアス:勝っても死んだら意味ないよぉ。

エミリア:彼ならきっとこう言うわ、「死ぬときは、自分に負けたときだ」

ルディアス:はぁ、ほんっと好きだよね、ジーン・ジェイクスのこと。真似はいいから、ちゃんと男のフリして。

エミリア:むぅ。

ギルド長:エマニュエル・イアハート、ルディオ・ブルース、前へ。

   ……二人での優勝とは、数十年ぶりだ。君たちもまた、新しい伝説を残すのかもしれないな。

エミリア:光栄です。

ルディアス:空艇士の名に恥じぬよう努めます。

ギルド長:よろしい。 第八十九回、空艇コンテストレースにおいて、優秀な成績を収めた貴殿らを、王立空艇士ギルドの一員としてここに認める。 貴殿らの今後の働きに期待する。おめでとう。

   大きくなる歓声。

■ギルド受付

受付嬢:受理できません。

エミリア:なんでよ!?

ルディアス:(小声)エマ!

エミリア:ん、んんっ。俺たちは、コンテストレース優勝者だ。ギルドに登録できるはずだろ。

受付嬢:ええ、エマニュエルさんとルディオさん「個人」の、空艇士としての登録は可能です。

エミリア:じゃあなにがだめ!?

受付嬢:「パーティ」、つまり、船の登録は、飛行士(ひこうし)、整備士、航空士(こうくうし)の最低三名が揃っていないとできないんです。ちなみに、船長はどの役職でもかまいません。

エミリア:はぁあああ!?

ルディアス:ああ、あの、えーっと、ギルドで、斡旋(あっせん)や紹介とかって……?

受付嬢:ありますよ。

エミリア:んじゃあ、優秀な! 航空士を一名。

ルディアス:エマぁ……。

エミリア:なんだよ! 優勝チームだぞ、俺たちの足を引っ張るようなやつに入られても困る!

受付嬢:うーん、昨日ちょうど、お一方決まってしまいましてねぇ……。

エミリア:王都ハスケルの受付だろ、何人かいるんじゃねえの!?

受付嬢:と言われましても。航空士志望の方は元々人数が少なくて……それに、「優秀な」となりますと……。

ルディアス:す、すみません、とにかく、もし乗船希望の航空士さんが見つかったら、教えてください。

受付嬢:かしこまりました。それではご連絡先をこちらに。

■街中、ギルド前

   大扉の閉まる音。
エミリア:はあ……これからあたしたちの……めくるめく冒険が……。

ルディアス:始まらなかったね。

エミリア:うわあああああん。

ルディアス:みっともないから泣かないでよぉ……。

エミリア:信じらんない信じらんない信じらんなーい! なんのためにハスケルまで来たのよーーーッ!

ルディアス:うわうわうわ、ちょ、ちょ、僕をゆすっても航空士はでてこない……うぷ。

エミリア:うにゃあああああ! あ痛っ! 

ルディアス:あーもう、ほら、暴れるから……。

エミリア:接続部も痛い……このっポンコツ義足ッ……このっ。

ルディアス:はぁ、叩かない。

エミリア:うー……じくじくする。

ルディアス:身長も伸びてるし、そろそろ先生に診てもらいにいかないとね。

エミリア:遠くてめんどい。先生が来てくれればいいのに。

ルディアス:あの人は絶対国から出てこないよ。はい、背中乗って。宿に戻って整備しよ。

エミリア:うーっ。

   ルディ、エミリアを背負う。

アネット:あの。

ルディアス:はい?

アネット:ギルドの方ですよね。

ルディアス:あー、それは、そう、なんですけど。

アネット:……?

ルディアス:僕たち、まだパーティとして登録できてないので、正式に所属とは……。

アネット:昨日のコンテストレースの優勝者なのに?

エミリア:そうだよっ、人数不足で登録できねぇんだよ、文句あっか!

ルディアス:いい年して威嚇しない。

エミリア:しゃーっ!

アネット:そうですか。つまり、依頼はまだ受けられないと。

ルディアス:お恥ずかしながら。

アネット:それは失礼いたしました。ではそこ、通していただけますか。

ルディアス:ああ、すみません。邪魔でしたね。

アネット:はい。

   ルディ、ドアを引いて開けてあげる。

ルディアス:(重いドア開けAD)どうぞ。

アネット:お気遣い、感謝いたします。

   ドア閉まる。

エミリア:あんなやつにドアなんか開けてやらなくていいのよ、お人よし!

ルディアス:ごめん、つい、癖で。

エミリア:なんなのあの女ァ!

ルディアス:ちょっと、暴れないで、頼むから。 

■宿

   ドアを挟んだ会話。ノックの音。
   SE入れる際は入浴中の水音。

ルディアス:エマ―。

エミリア:……。

ルディアス:エミリア? 体洗えた?

エミリア:んー。

ルディアス:足の痛みどう?

エミリア:大丈夫ー。

ルディアス:長風呂は良くないけど、お湯足す?

エミリア:……出る!

ルディアス:ん、じゃあ、開けるよ。

エミリア:んー。

   ドア開け。

ルディアス:(驚く)あのさぁ! 自分で出るって言っといてなんで布巻いてないの?!

エミリア:えー? お風呂くらいガキのころ散々一緒に入ったじゃん。

ルディアス:そういうことじゃないんだって。

エミリア:あらー、お年頃ですかぁ? ルディアスくーん。 

ルディアス:ちが、あーーーも、そうだよ!

エミリア:笑えるー。

ルディアス:もう、ほら、さっさとタオル巻いて!

エミリア:はいよー。お願いしまーす。

ルディアス:ったく……首に手回して。

エミリア:ふん、男のフリしろってんなら、普段から男として扱えよ。

ルディアス:黙って。

エミリア:ふふ、こんな傷だらけの体、女として見る奴なんかいねーから気にすんなって、な。

ルディアス:……。

   ベッドに落とす。

エミリア:いったぁ!

ルディアス:服着たら呼んで。

エミリア:……何キレてんだ、あいつ。

エミリア:ルディ―! 着たけどー。

ルディアス:足診る。こっち向いて。

エミリア:はいよー。

ルディアス:ちょっと赤くなってる。

エミリア:痛いもん。んああ……消毒しみる。

ルディアス:ごめん。昨日ちゃんと処置しなかったせい……。

エミリア:お互い疲れてたんだからいーよー。

ルディアス:……エミリアの脚は、僕が整備するって約束した。

エミリア:重いなールディアスくんはー。いいんだよ、臨機応変でー。

ルディアス:エマは楽観的過ぎ。

エミリア:えー。

ルディアス:あとあんな無理やりな飛行もういやだ。

エミリア:あの判断は間違ってなかったでしょ!

ルディアス:結果論だよ!

エミリア:船長はあたしよ!

ルディアス:……。

エミリア:……。

ルディアス:ごめん。

エミリア:うん。

   一瞬間。
   机の上に義足を置き、ランプの灯を小さくする。

ルディアス:……ランプまぶしい?

エミリア:大丈夫。寝ないの。

ルディアス:ちょっとだけ義足のメンテする。おやすみ。

エミリア:……おやすみ。

■ギルド、謁見室

アネット:新世界地図、ですか。

ギルド長:ああ。六年前の「大鼓動(だいこどう)」によって、島と柱を繋ぐ鎖が切れ、漂流島(ひょうりゅうとう)となってしまった島々がある。

アネット:大鼓動、ひどい揺れでした。

ギルド長:君はたしかそのとき……。

アネット:12のころです。母と共に怯えるだけの子供でした。

ギルド長:今はもう子供ではないといいたげだ。

アネット:ええ。そのつもりで。……その直後でした。父が消息を絶ったのは。

ギルド長:父君とは私も親交があった。……この、浮島(うきしま)だらけの世界で、初めて世界地図を書き上げたお方だ。酸の海からほんの少し顔を出す地表。それを柱として、鎖でつなぎ留められた、空に浮く島々。
我々の住む土地は、非常に心もとない。
鎖が切れてしまえば、居場所を保つことはできない。

アネット:海水面はここ数十年で数メートル上昇したと聞きます。

ギルド長:そうだ。そのせいで海水に浸かった鎖が腐食し、大鼓動の衝撃で切れた。

アネット:ミスリルと言えど酸には弱いのですね。

ギルド長:そういうのは錬金術師に聞いてくれ。

アネット:それで、私が呼ばれた理由をお伺いしても?

ギルド長:王立空艇アカデミア、主席にて卒業とのこと。まずはおめでとう。

アネット:ありがとうございます。

ギルド長:空艇士ギルドより依頼だ。

アネット:……。

ギルド長:漂流島の現在地点を特定、報告。新世界地図を作製してほしい。

アネット:報告したところで浮島(うきしま)は流れてゆくものでは?

ギルド長:どの領の管轄とするかは後々決める。そのため、すぐに新しい鎖をかけることはできない。

ギルド長:価値無しとなれば、核である浮遊石を取り出し、資源とする。

アネット:その場合住民は。

ギルド長:それは君の知るところではない。

アネット:承知いたしました。……あの、なぜ、私なのですか。

ギルド長:主席には良い初任務だろう。アネット・ハーシュマン。

アネット:……。

ギルド長:それとも、女性には荷が重いかな?

アネット:いいえ。光栄でございます。謹んで、お受けいたします。

ギルド長:それでこそ、航空士一族、ハーシュマン家の娘。その名に恥じぬよう。

アネット:……はい。

■翌日、ギルド受付

エミリア:おねーさんっ!

受付嬢:あら、エマニュエルさん、ルディオさん、おはようございます。

エミリア:航空士の応募あったー?

ルディアス:昨日の今日であるわけないでしょ。

受付嬢:残念ながら、航空士の応募はありません。

エミリア:ちぇー。

ルディアス:ほらね。あの、昨日はバタバタしてしまったので、改めて新聞で募集をかけようかと思うんですけど。

受付嬢:その必要はありません。

ルディアス:へ?

受付嬢:航空士の応募はありませんでしたが、あなた方に、依頼があります。

エミリア:依頼?

受付嬢:ええ。ご指名で。

■ギルド別室

エミリア:(同時)えぇええええええ!?

ルディアス:(同時)えっ、えぇ!?

ギルド長:はっはっはっ。元気がいいねぇ。

エミリア:あた、お、俺たちが新・世界地図を……?

ルディアス:普通、初任務ってお使いとかお使いとか、お使いとかじゃないんですか?

エミリア:はっはーん。コンテストレース優勝者だかんなぁ! 華々しいスタートを切らねぇとなあ!

ギルド長:もちろん、お使いもしてもらうよ。君たち、実績もないし。

エミリア:えぇ!?

ギルド長:これは長期的な任務になる。非常に重要だが、逆に言うと現役の空艇士たちは、暇じゃないんだ。

ルディアス:遠回しに新人は暇って言われた……。

ギルド長:依頼は一度に複数受けることができるし、これはギルドからということで支援金が出る。

エミリア:おお!

ルディアス:それは、とてもありがたいんですが、本当に僕たちにそんな大役が務まるのか……。

ルディアス:それに航空士もまだ見つかってませんし。

   ノック、ドア開く。

アネット:失礼します。遅くなりました。

ギルド長:アネット君。ちょうどよいタイミングだ。

アネット:まさかお二方がこんなに早起きとは思わず。

ギルド長:構わないよ。昨日の話と重複する部分を伝えていた。

エミリア:あ、あん、あん(た)、お前……!

アネット:昨日ぶりです。

ルディアス:どうしてここに……?

ギルド長:彼女が、君たちの船の航空士になる。

エミリア:えええええええええ!!

アネット:うるさ……。

ルディアス:航空士!?

アネット:仕方なくです。

エミリア:あんだって?

アネット:準優勝チームにも、古株のパーティにも同乗を断られましたので。……あなた方には航空士が必要。私は、王立空艇アカデミア・航空科、主席卒業で優秀な航空士。そして任務をするためにチームメイトが必要。……ほら、利害の一致。

ルディアス:断られたの……?

アネット:ええ。学生あがりたて、しかも女なんぞ乗せられないと。


   一瞬の沈黙。

エミリア:古いな。

ルディアス:エマ。

エミリア:脳みそが古い。著名な女性航空士は何人もいる。……飛行士と違って。

アネット:そうですね。頭のお堅い方々ばかりでした。

エミリア:……いいぜ、乗りな。

ギルド長:ルディオ君の意見は聞かなくていいのかな?

ルディアス:船長の、意のままに。

エミリア:ふふん。

ギルド長:だそうだよアネット君。

アネット:ええ、彼女ならそう言ってくれると思いました。

ギルド長:彼女?

エミリア:あああああああ楽しみだなあああああああ!! さっさと手続きしようぜ!

ギルド長:ん?

ルディアス:あああああ、そうですね、手続きとー、えっとぉ、あと! アネットさんとも、もう少し親睦を深めたいところですね!

ギルド長:おお、そうか? では任務の詳細はアネット君から話してくれ。

アネット:かしこまりました。

ギルド長:君たちの旅に、幸運があらんことを。

ルディアス:ありがとうございます! いいい今ドア、お開けしますね!!

   ドア開いて閉まる。

エミリア:はぁ、行った?

ルディアス:うん。足音は、行った、かな。

アネット:慌てすぎじゃなくて?

エミリア:お前のせいだっつの!

アネット:あ、もう隠さなくていいですよ。

ルディアス:なん、なんでエマが女だってわかったんですか?

アネット:昨日、あなた方の会話をしばらく聞いていて。

ルディアス:だから喋り方には気をつけろってあれほどぉおお!

エミリア:そんなすぐ慣れないわよぉおお!

アネット:逆に聞きたいのですが、なぜ男性の恰好を?

エミリア:……。

ルディアス:あ……えっと、僕が勧めたんです。ちゃんと仕事がとれるようにって……。

エミリア:仕方ないでしょ……女は飛行士にはなれないのよ。

アネット:なるほど。

エミリア:さっきも言ったけど。女性航空士は何人もいるけど、女性飛行士はいないの。だから、飛行士が女だというだけで、依頼を避けられるわ。

アネット:……案外つまらない理由でした。

エミリア:ハァ!?

ルディアス:あの、アネットさん、僕たち結構悩んで決めたんですけど……。

アネット:私は、腕さえよければ性別や性格は気にしません。腕が悪ければ、あなた方の船を降りて、次の船を探します。
……新・世界地図の作成は私が請け負った依頼ですから。べつにあなた方と一緒でなくても私は構いません。

エミリア:うぐっ……そ、その理屈で言ったらぁ、準優勝チームよりさきに、うちに頼みに来るのが筋じゃねぇの?

アネット:いえ、あなたの操舵(そうだ)、荒いので。

エミリア:あぁ?

アネット:チェックポイント周辺の飛行は記録管が残していますし、ゴール直前も非常に危なっかしい。力技もいいところでした。空路取りもめちゃくちゃ。

ルディアス:も、申し訳ない。

アネット:安全運航(うんこう)、第一。です。

エミリア:このアマァ!!

ルディアス:男らしいけどそれは輩(やから)だよエマ!

アネット:あら、品がお悪いこと。

■ギルド受付

   大きなハンコを押す受付嬢。

受付嬢:はい、こちらで受理いたします。

エミリア:よかったー!

ルディアス:これからよろしくお願いします!

受付嬢:早めに決まってよかったですね。

アネット:はあ。

受付嬢:アネットさんもよ。

アネット:ええ、数日にわたるもろもろのお手伝い、お世話になりました。

受付嬢:いいえー、ああ、これから私も楽しみだわー。

エミリア:おう、有名になってやるから。依頼、いっぱい用意しといてくれよな!

アネット:この方とは気が合わない予感がするので、次お世話になるときは乗り換えかもしれません。

エミリア:おい……!

ルディアス:あー、はは。

受付嬢:ふふ、それでは改めて、「ブラック・ペレグリン号」。船長・および飛行士、エマニュエル・イアハートさん。

エミリア:はい!

受付嬢:整備士、ルディオ・ブルースさん。

ルディアス:はい。

受付嬢:航空士、アネット・ハーシュマンさん。

アネット:ええ。

受付嬢:あなた方の空の旅に、幸あらんことを!

エミリア:……。

ルディアス:……。

受付嬢:あら?

アネット:なんですか? そんなに見つめて。失礼ですよ。

エミリア:……ハーシュマン?

ルディアス:……ハーシュマンって言った?

アネット:ええ、アネット・ハーシュマンです。お伝えしませんでしたか?

エミリア:え、ロッカ・ハーシュマンの、親族?

アネット:娘です。

   一瞬の沈黙。

ルディアス:えええええええ!?

エミリア:えええええええ!?

受付嬢:あら、お二人とも知らなかったの?

エミリア:え、うそ、え? あの有名な小説、「クレイジー・ホーク号航空記」の? モデルの? ロッカ・ハーシュマンの?

アネット:娘です。はあ、この反応、いい加減めんどくさいんですが。

ルディアス:す、すごぉい。クールだね?

アネット:父とはもう数年話しておりませんし、書物に書かれた父は美化されすぎています。

エミリア:え、は、え。ファンです。

ルディアス:エマ? ジーンのファンじゃなかった?

アネット:あら。「田舎」まで父の名前が届いていたこと、とても光栄です。

エミリア:なんでこんな高飛車になった、娘ぇ……。

受付嬢:ちなみに、エマニュエルさんより年上よ。

エミリア:え!?

アネット:ふ。

エミリア:このアマァアア!!

アネット:ごめんなさい、品が悪いのは嫌いなんです。

受付嬢:ルディオ君、苦労するわね。

ルディアス:は、はは。

【次回予告!】やってもやらなくてもいいよ!

エミリア:せっかく男装してたのに第一話からバレバレじゃない!どうしてくれんのよぉ!

アネット:あれで隠し通せると本当に思ったんでしょうか、甚だ疑問です。

ルディアス:貿易港カサンドラへお使い任務を任されたブラック・ペレグリン号。僕らと別行動をとるアネットの真意とは?

ルディアス:次回、「それは歓迎の一杯の香り」 おたのしみに!

【続く】次→#2

2021.10.08.

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