概要
飛空艇コンテストレースに挑戦する飛行士エミリアと、整備士ルディアス。見た目を偽って、名前を偽って、それでも空艇士ギルドへ入らねばならない理由。
それは、冒険への欲。
※【伝声管】コップとか使うと楽しいかもしれません。おすすめは桃缶とかタンブラーといった金属製のもの。
- 所要時間:約30分
- 人数:5
比率 2:3 - ジャンル:ファンタジー、スチームパンク、冒険、ジュブナイル
登場人物
※キャラクター詳細は裂雲の翼トップページをご確認ください。
- エミリア
猪突猛進ガール。飛行士。 - ルディアス
紳士で気弱。整備士。 - アネット
貴族のお嬢様。航空士。 - ギルド長
でっかいおっさん。またはお兄さん。 - 受付嬢
できる女。
本編
■嵐の中、飛空艇内
エミリア:良い風ねぇええ! 飛びがいがあるぅ!
ルディアス:(伝声管)大嵐だってば! 上空、五時の方向、二機接近!
エミリア:了解、振り切る!
ルディアス:(伝声管) まっすぐ飛んじゃダメだ、同じ紋章が見える!
エミリア:挟み撃ち狙いね。 オッケー。
エミリア:(気づく)前方、十一時方向、積乱雲確認!
ルディアス:(伝声管) 左から大きく迂回しよう!
エミリア:いや、右から詰める!
ルディアス:(伝声管)右は危険だ!
ルディアス:「雲の裾(すそ)」に乗って距離を取ったほうがいい!
エミリア:今なら行ける! 速度上げて!
ルディアス:(伝声管) エマ! ああもう!
左舷(さげん)エンジン圧力上昇。浮遊石へのパワー供給三十パーセント。右舷(うげん)噴射タイミング教えて!
エミリア:捕まってなさいルディ! おもぉぉかじぃいっぱああい!
ルディアス:(伝声管)ま、まって! 石炭炊かないとっ、上昇間に合わないっ!
エミリア:待たない!
ルディアス:(伝声管)うぁあああああ!
■ゴール地点
拍手と歓声。
エミリア:ふっふふーん! 狂乱の風乗りたぁ~あたしのことよ。
ルディアス:強引なんだってばぁ……。
エミリア:勝ったからいいじゃない。
ルディアス:勝っても死んだら意味ないよぉ。
エミリア:彼ならきっとこう言うわ、「死ぬときは、自分に負けたときだ」
ルディアス:はぁ、ほんっと好きだよね、ジーン・ジェイクスのこと。真似はいいから、ちゃんと男のフリして。
エミリア:むぅ。
ギルド長:エマニュエル・イアハート、ルディオ・ブルース、前へ。
……二人での優勝とは、数十年ぶりだ。君たちもまた、新しい伝説を残すのかもしれないな。
エミリア:光栄です。
ルディアス:空艇士の名に恥じぬよう努めます。
ギルド長:よろしい。 第八十九回、空艇コンテストレースにおいて、優秀な成績を収めた貴殿らを、王立空艇士ギルドの一員としてここに認める。 貴殿らの今後の働きに期待する。おめでとう。
大きくなる歓声。
■ギルド受付
受付嬢:受理できません。
エミリア:なんでよ!?
ルディアス:(小声)エマ!
エミリア:ん、んんっ。俺たちは、コンテストレース優勝者だ。ギルドに登録できるはずだろ。
受付嬢:ええ、エマニュエルさんとルディオさん「個人」の、空艇士としての登録は可能です。
エミリア:じゃあなにがだめ!?
受付嬢:「パーティ」、つまり、船の登録は、飛行士(ひこうし)、整備士、航空士(こうくうし)の最低三名が揃っていないとできないんです。ちなみに、船長はどの役職でもかまいません。
エミリア:はぁあああ!?
ルディアス:ああ、あの、えーっと、ギルドで、斡旋(あっせん)や紹介とかって……?
受付嬢:ありますよ。
エミリア:んじゃあ、優秀な! 航空士を一名。
ルディアス:エマぁ……。
エミリア:なんだよ! 優勝チームだぞ、俺たちの足を引っ張るようなやつに入られても困る!
受付嬢:うーん、昨日ちょうど、お一方決まってしまいましてねぇ……。
エミリア:王都ハスケルの受付だろ、何人かいるんじゃねえの!?
受付嬢:と言われましても。航空士志望の方は元々人数が少なくて……それに、「優秀な」となりますと……。
ルディアス:す、すみません、とにかく、もし乗船希望の航空士さんが見つかったら、教えてください。
受付嬢:かしこまりました。それではご連絡先をこちらに。
■街中、ギルド前
大扉の閉まる音。
エミリア:はあ……これからあたしたちの……めくるめく冒険が……。
ルディアス:始まらなかったね。
エミリア:うわあああああん。
ルディアス:みっともないから泣かないでよぉ……。
エミリア:信じらんない信じらんない信じらんなーい! なんのためにハスケルまで来たのよーーーッ!
ルディアス:うわうわうわ、ちょ、ちょ、僕をゆすっても航空士はでてこない……うぷ。
エミリア:うにゃあああああ! あ痛っ!
ルディアス:あーもう、ほら、暴れるから……。
エミリア:接続部も痛い……このっポンコツ義足ッ……このっ。
ルディアス:はぁ、叩かない。
エミリア:うー……じくじくする。
ルディアス:身長も伸びてるし、そろそろ先生に診てもらいにいかないとね。
エミリア:遠くてめんどい。先生が来てくれればいいのに。
ルディアス:あの人は絶対国から出てこないよ。はい、背中乗って。宿に戻って整備しよ。
エミリア:うーっ。
ルディ、エミリアを背負う。
アネット:あの。
ルディアス:はい?
アネット:ギルドの方ですよね。
ルディアス:あー、それは、そう、なんですけど。
アネット:……?
ルディアス:僕たち、まだパーティとして登録できてないので、正式に所属とは……。
アネット:昨日のコンテストレースの優勝者なのに?
エミリア:そうだよっ、人数不足で登録できねぇんだよ、文句あっか!
ルディアス:いい年して威嚇しない。
エミリア:しゃーっ!
アネット:そうですか。つまり、依頼はまだ受けられないと。
ルディアス:お恥ずかしながら。
アネット:それは失礼いたしました。ではそこ、通していただけますか。
ルディアス:ああ、すみません。邪魔でしたね。
アネット:はい。
ルディ、ドアを引いて開けてあげる。
ルディアス:(重いドア開けAD)どうぞ。
アネット:お気遣い、感謝いたします。
ドア閉まる。
エミリア:あんなやつにドアなんか開けてやらなくていいのよ、お人よし!
ルディアス:ごめん、つい、癖で。
エミリア:なんなのあの女ァ!
ルディアス:ちょっと、暴れないで、頼むから。
■宿
ドアを挟んだ会話。ノックの音。
SE入れる際は入浴中の水音。
ルディアス:エマ―。
エミリア:……。
ルディアス:エミリア? 体洗えた?
エミリア:んー。
ルディアス:足の痛みどう?
エミリア:大丈夫ー。
ルディアス:長風呂は良くないけど、お湯足す?
エミリア:……出る!
ルディアス:ん、じゃあ、開けるよ。
エミリア:んー。
ドア開け。
ルディアス:(驚く)あのさぁ! 自分で出るって言っといてなんで布巻いてないの?!
エミリア:えー? お風呂くらいガキのころ散々一緒に入ったじゃん。
ルディアス:そういうことじゃないんだって。
エミリア:あらー、お年頃ですかぁ? ルディアスくーん。
ルディアス:ちが、あーーーも、そうだよ!
エミリア:笑えるー。
ルディアス:もう、ほら、さっさとタオル巻いて!
エミリア:はいよー。お願いしまーす。
ルディアス:ったく……首に手回して。
エミリア:ふん、男のフリしろってんなら、普段から男として扱えよ。
ルディアス:黙って。
エミリア:ふふ、こんな傷だらけの体、女として見る奴なんかいねーから気にすんなって、な。
ルディアス:……。
ベッドに落とす。
エミリア:いったぁ!
ルディアス:服着たら呼んで。
エミリア:……何キレてんだ、あいつ。
エミリア:ルディ―! 着たけどー。
ルディアス:足診る。こっち向いて。
エミリア:はいよー。
ルディアス:ちょっと赤くなってる。
エミリア:痛いもん。んああ……消毒しみる。
ルディアス:ごめん。昨日ちゃんと処置しなかったせい……。
エミリア:お互い疲れてたんだからいーよー。
ルディアス:……エミリアの脚は、僕が整備するって約束した。
エミリア:重いなールディアスくんはー。いいんだよ、臨機応変でー。
ルディアス:エマは楽観的過ぎ。
エミリア:えー。
ルディアス:あとあんな無理やりな飛行もういやだ。
エミリア:あの判断は間違ってなかったでしょ!
ルディアス:結果論だよ!
エミリア:船長はあたしよ!
ルディアス:……。
エミリア:……。
ルディアス:ごめん。
エミリア:うん。
一瞬間。
机の上に義足を置き、ランプの灯を小さくする。
ルディアス:……ランプまぶしい?
エミリア:大丈夫。寝ないの。
ルディアス:ちょっとだけ義足のメンテする。おやすみ。
エミリア:……おやすみ。
■ギルド、謁見室
アネット:新世界地図、ですか。
ギルド長:ああ。六年前の「大鼓動(だいこどう)」によって、島と柱を繋ぐ鎖が切れ、漂流島(ひょうりゅうとう)となってしまった島々がある。
アネット:大鼓動、ひどい揺れでした。
ギルド長:君はたしかそのとき……。
アネット:12のころです。母と共に怯えるだけの子供でした。
ギルド長:今はもう子供ではないといいたげだ。
アネット:ええ。そのつもりで。……その直後でした。父が消息を絶ったのは。
ギルド長:父君とは私も親交があった。……この、浮島(うきしま)だらけの世界で、初めて世界地図を書き上げたお方だ。酸の海からほんの少し顔を出す地表。それを柱として、鎖でつなぎ留められた、空に浮く島々。
我々の住む土地は、非常に心もとない。
鎖が切れてしまえば、居場所を保つことはできない。
アネット:海水面はここ数十年で数メートル上昇したと聞きます。
ギルド長:そうだ。そのせいで海水に浸かった鎖が腐食し、大鼓動の衝撃で切れた。
アネット:ミスリルと言えど酸には弱いのですね。
ギルド長:そういうのは錬金術師に聞いてくれ。
アネット:それで、私が呼ばれた理由をお伺いしても?
ギルド長:王立空艇アカデミア、主席にて卒業とのこと。まずはおめでとう。
アネット:ありがとうございます。
ギルド長:空艇士ギルドより依頼だ。
アネット:……。
ギルド長:漂流島の現在地点を特定、報告。新世界地図を作製してほしい。
アネット:報告したところで浮島(うきしま)は流れてゆくものでは?
ギルド長:どの領の管轄とするかは後々決める。そのため、すぐに新しい鎖をかけることはできない。
ギルド長:価値無しとなれば、核である浮遊石を取り出し、資源とする。
アネット:その場合住民は。
ギルド長:それは君の知るところではない。
アネット:承知いたしました。……あの、なぜ、私なのですか。
ギルド長:主席には良い初任務だろう。アネット・ハーシュマン。
アネット:……。
ギルド長:それとも、女性には荷が重いかな?
アネット:いいえ。光栄でございます。謹んで、お受けいたします。
ギルド長:それでこそ、航空士一族、ハーシュマン家の娘。その名に恥じぬよう。
アネット:……はい。
■翌日、ギルド受付
エミリア:おねーさんっ!
受付嬢:あら、エマニュエルさん、ルディオさん、おはようございます。
エミリア:航空士の応募あったー?
ルディアス:昨日の今日であるわけないでしょ。
受付嬢:残念ながら、航空士の応募はありません。
エミリア:ちぇー。
ルディアス:ほらね。あの、昨日はバタバタしてしまったので、改めて新聞で募集をかけようかと思うんですけど。
受付嬢:その必要はありません。
ルディアス:へ?
受付嬢:航空士の応募はありませんでしたが、あなた方に、依頼があります。
エミリア:依頼?
受付嬢:ええ。ご指名で。
■ギルド別室
エミリア:(同時)えぇええええええ!?
ルディアス:(同時)えっ、えぇ!?
ギルド長:はっはっはっ。元気がいいねぇ。
エミリア:あた、お、俺たちが新・世界地図を……?
ルディアス:普通、初任務ってお使いとかお使いとか、お使いとかじゃないんですか?
エミリア:はっはーん。コンテストレース優勝者だかんなぁ! 華々しいスタートを切らねぇとなあ!
ギルド長:もちろん、お使いもしてもらうよ。君たち、実績もないし。
エミリア:えぇ!?
ギルド長:これは長期的な任務になる。非常に重要だが、逆に言うと現役の空艇士たちは、暇じゃないんだ。
ルディアス:遠回しに新人は暇って言われた……。
ギルド長:依頼は一度に複数受けることができるし、これはギルドからということで支援金が出る。
エミリア:おお!
ルディアス:それは、とてもありがたいんですが、本当に僕たちにそんな大役が務まるのか……。
ルディアス:それに航空士もまだ見つかってませんし。
ノック、ドア開く。
アネット:失礼します。遅くなりました。
ギルド長:アネット君。ちょうどよいタイミングだ。
アネット:まさかお二方がこんなに早起きとは思わず。
ギルド長:構わないよ。昨日の話と重複する部分を伝えていた。
エミリア:あ、あん、あん(た)、お前……!
アネット:昨日ぶりです。
ルディアス:どうしてここに……?
ギルド長:彼女が、君たちの船の航空士になる。
エミリア:えええええええええ!!
アネット:うるさ……。
ルディアス:航空士!?
アネット:仕方なくです。
エミリア:あんだって?
アネット:準優勝チームにも、古株のパーティにも同乗を断られましたので。……あなた方には航空士が必要。私は、王立空艇アカデミア・航空科、主席卒業で優秀な航空士。そして任務をするためにチームメイトが必要。……ほら、利害の一致。
ルディアス:断られたの……?
アネット:ええ。学生あがりたて、しかも女なんぞ乗せられないと。
一瞬の沈黙。
エミリア:古いな。
ルディアス:エマ。
エミリア:脳みそが古い。著名な女性航空士は何人もいる。……飛行士と違って。
アネット:そうですね。頭のお堅い方々ばかりでした。
エミリア:……いいぜ、乗りな。
ギルド長:ルディオ君の意見は聞かなくていいのかな?
ルディアス:船長の、意のままに。
エミリア:ふふん。
ギルド長:だそうだよアネット君。
アネット:ええ、彼女ならそう言ってくれると思いました。
ギルド長:彼女?
エミリア:あああああああ楽しみだなあああああああ!! さっさと手続きしようぜ!
ギルド長:ん?
ルディアス:あああああ、そうですね、手続きとー、えっとぉ、あと! アネットさんとも、もう少し親睦を深めたいところですね!
ギルド長:おお、そうか? では任務の詳細はアネット君から話してくれ。
アネット:かしこまりました。
ギルド長:君たちの旅に、幸運があらんことを。
ルディアス:ありがとうございます! いいい今ドア、お開けしますね!!
ドア開いて閉まる。
エミリア:はぁ、行った?
ルディアス:うん。足音は、行った、かな。
アネット:慌てすぎじゃなくて?
エミリア:お前のせいだっつの!
アネット:あ、もう隠さなくていいですよ。
ルディアス:なん、なんでエマが女だってわかったんですか?
アネット:昨日、あなた方の会話をしばらく聞いていて。
ルディアス:だから喋り方には気をつけろってあれほどぉおお!
エミリア:そんなすぐ慣れないわよぉおお!
アネット:逆に聞きたいのですが、なぜ男性の恰好を?
エミリア:……。
ルディアス:あ……えっと、僕が勧めたんです。ちゃんと仕事がとれるようにって……。
エミリア:仕方ないでしょ……女は飛行士にはなれないのよ。
アネット:なるほど。
エミリア:さっきも言ったけど。女性航空士は何人もいるけど、女性飛行士はいないの。だから、飛行士が女だというだけで、依頼を避けられるわ。
アネット:……案外つまらない理由でした。
エミリア:ハァ!?
ルディアス:あの、アネットさん、僕たち結構悩んで決めたんですけど……。
アネット:私は、腕さえよければ性別や性格は気にしません。腕が悪ければ、あなた方の船を降りて、次の船を探します。
……新・世界地図の作成は私が請け負った依頼ですから。べつにあなた方と一緒でなくても私は構いません。
エミリア:うぐっ……そ、その理屈で言ったらぁ、準優勝チームよりさきに、うちに頼みに来るのが筋じゃねぇの?
アネット:いえ、あなたの操舵(そうだ)、荒いので。
エミリア:あぁ?
アネット:チェックポイント周辺の飛行は記録管が残していますし、ゴール直前も非常に危なっかしい。力技もいいところでした。空路取りもめちゃくちゃ。
ルディアス:も、申し訳ない。
アネット:安全運航(うんこう)、第一。です。
エミリア:このアマァ!!
ルディアス:男らしいけどそれは輩(やから)だよエマ!
アネット:あら、品がお悪いこと。
■ギルド受付
大きなハンコを押す受付嬢。
受付嬢:はい、こちらで受理いたします。
エミリア:よかったー!
ルディアス:これからよろしくお願いします!
受付嬢:早めに決まってよかったですね。
アネット:はあ。
受付嬢:アネットさんもよ。
アネット:ええ、数日にわたるもろもろのお手伝い、お世話になりました。
受付嬢:いいえー、ああ、これから私も楽しみだわー。
エミリア:おう、有名になってやるから。依頼、いっぱい用意しといてくれよな!
アネット:この方とは気が合わない予感がするので、次お世話になるときは乗り換えかもしれません。
エミリア:おい……!
ルディアス:あー、はは。
受付嬢:ふふ、それでは改めて、「ブラック・ペレグリン号」。船長・および飛行士、エマニュエル・イアハートさん。
エミリア:はい!
受付嬢:整備士、ルディオ・ブルースさん。
ルディアス:はい。
受付嬢:航空士、アネット・ハーシュマンさん。
アネット:ええ。
受付嬢:あなた方の空の旅に、幸あらんことを!
エミリア:……。
ルディアス:……。
受付嬢:あら?
アネット:なんですか? そんなに見つめて。失礼ですよ。
エミリア:……ハーシュマン?
ルディアス:……ハーシュマンって言った?
アネット:ええ、アネット・ハーシュマンです。お伝えしませんでしたか?
エミリア:え、ロッカ・ハーシュマンの、親族?
アネット:娘です。
一瞬の沈黙。
ルディアス:えええええええ!?
エミリア:えええええええ!?
受付嬢:あら、お二人とも知らなかったの?
エミリア:え、うそ、え? あの有名な小説、「クレイジー・ホーク号航空記」の? モデルの? ロッカ・ハーシュマンの?
アネット:娘です。はあ、この反応、いい加減めんどくさいんですが。
ルディアス:す、すごぉい。クールだね?
アネット:父とはもう数年話しておりませんし、書物に書かれた父は美化されすぎています。
エミリア:え、は、え。ファンです。
ルディアス:エマ? ジーンのファンじゃなかった?
アネット:あら。「田舎」まで父の名前が届いていたこと、とても光栄です。
エミリア:なんでこんな高飛車になった、娘ぇ……。
受付嬢:ちなみに、エマニュエルさんより年上よ。
エミリア:え!?
アネット:ふ。
エミリア:このアマァアア!!
アネット:ごめんなさい、品が悪いのは嫌いなんです。
受付嬢:ルディオ君、苦労するわね。
ルディアス:は、はは。
【次回予告!】やってもやらなくてもいいよ!
エミリア:せっかく男装してたのに第一話からバレバレじゃない!どうしてくれんのよぉ!
アネット:あれで隠し通せると本当に思ったんでしょうか、甚だ疑問です。
ルディアス:貿易港カサンドラへお使い任務を任されたブラック・ペレグリン号。僕らと別行動をとるアネットの真意とは?
ルディアス:次回、「それは歓迎の一杯の香り」 おたのしみに!
【続く】次→#2
2021.10.08.