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『五人のやかましい会社員』【♂0:♀5】20分

概要

ランチタイム、休憩室に集まってきた5人の女性たち。

喫煙ルームが撤去されるらしい。

喫煙者と非喫煙者のじんぎなきたたかいがはじまった。

※読み替えてもらえば男性で演じていただいてもかまいません。

  • 所要時間:約20分
  • 人数:女性5
  • ジャンル:現代、日常、コメディ

登場人物

  • 一宮(いちみや)
    喫煙者。ヘビースモーカー。管理職。
  • 二見(ふたみ)
    非喫煙者。平社員だけど仕事が速い。
  • 三村(みむら)
      喫煙者(リキッドOk派)。平社員。一宮と同期。ゆるキャリ。
  • 四ノ原(しのはら)
    元喫煙者、現在禁煙中。平社員。一宮から直接指導を受けていた後輩。
  • 伍代(ごだい)
      非喫煙者。平社員。服装自由なのをいいことに派手な服を着たり金髪にしてみたり。

本編

□休憩室
一宮:おつかれさまー。
三村:一宮さん、おつおつー。
一宮:三村さぁん! ……回覧見た?
三村:見た見た。喫煙ルーム撤去のお知らせでしょ?
一宮:ありえないんだけど!
三村:ねー。そういう世間の流れ? みたいなの遂にウチにもきたか〜。
一宮:社長が非喫煙者だからってどうせ思いつきだよ。……しかもなんなの、あの当てつけのような添付資料! 禁煙によって生産率があがりますぅ? イライラ募って逆に落ちるわい!
三村:一宮さんはヘビースモーカーだからねー。えらいえらい。
一宮:三村さぁん……ね、署名集めて意見書ださない?協力してくれるよね?
三村:あ、はい、いいですよ。
二見:お疲れ様です。
一宮:お、おつかれー。
二見:……お疲れ様です三村さん。
一宮:こら二見、あたしだよ声掛けたの。
二見:お疲れ様です、一宮さん。
一宮:さりげなく距離をとるな。
二見:すみません。タバコ臭くて。
一宮:なっ……。
二見:そういえば喫煙ルーム撤去になりましたねぇ。これで穏やかに過ごせます。
一宮:いま二人敵に回したぞ、分かってるか? ん?
三村:あぁー、私隣の席だから、二見ちゃんいつもごめんねぇ。
二見:三村さんは臭くないので別に。リキッドですよね?
一宮:リキッドだって匂うときは匂うでしょうが。
二見:そもそも、もっと早く対応すべきだったんですよ。時勢に逆らってますよね。なんで喫煙者だけタバコ休憩がまかり通ってるのか甚だ不服です。倍働いて下さい。
一宮:管理職だわ、働いてるわ!
三村:うっ、ご、ごめんねぇ。
四ノ原:うーっす。
一宮:四ノ原ぁ!
四ノ原:うぇっ! なん、なんすか一宮先輩!
一宮:ねえ! 喫煙ルーム! 撤去!
四ノ原:あぁ。
一宮:四ノ原は味方だよね! 意見書出すって言ったら署名してくれる??
四ノ原:あー……あたし禁煙中なんす。
一宮:は?
二見:何度目ですか。
四ノ原:いやっ今度こそは! 今度こそは成功させるから!
三村:あらーまた彼氏?
四ノ原:はい……タバコ吸う人間とはちゅーしませんって……。
一宮:いやいやいやいや四ノ原クゥン。私は知っているよォ? 君はぁこっち側の人間だって。
四ノ原:一宮先輩。あたし、誓ったんす。もう、ブレません……!
二見:良いことですよ。禁煙によって体が健康になれば医療費もセーブできます。
四ノ原:禁煙外来通ってるんで今んところはセーブできてませんけどねえ。
三村:長い目で見たらねぇ。
四ノ原:まあ、社内に喫煙ルームがなくなれば誘惑も減りますので、皆さんにはあたしの道連れになってもらって。
一宮:とかなんとかいって来月には戻ってくるから絶対。そのとき後悔するよ。社外の喫煙所まで行かなきゃいけないんだよ? 一番近いの駅のところだよ?
四ノ原:くっ……そ、そう、言われると……。
三村:心を強く持って? 今度こそ結婚までこぎつけるって意気込んでたじゃない。
四ノ原:三村さぁん! どうやったら結婚できるんですかあ!
二見:伍代さん、あなたはどう思いますか。
伍代:ん? うち?
三村:ひっ、あ、ご、伍代さん、いたの?
二見:私が来た時にはもういらっしゃいましたよ。
伍代:最初からいたよー。
二見:あなたも非喫煙者ですよね。
伍代:うちはどっちでもいいかなー。べつにあっても困ってないし。
二見:はあー、あなたはそういう人でした。
伍代:てかぁ、なんで二見さんは喫煙ルームがない方がいいと思うの?
二見:そんなの当り前じゃないですか。喫煙は生産性を下げます。
一宮:ああん? どういうことだよ。
三村:まあまあ聞くだけ聞きましょ。
二見:例えば井上課長はだいたい一時間おきに席を立たれます。一度のたばこ休憩につきかかる時間は約十五分。昼休憩は抜きにしても一日平均六回。一日九十分の損失です。就業時間のうち約二十パーセントを煙草に費やしてるんですよ。無駄以外のなにものでもありません。
三村:そうよね。井上課長はちょっとタバコ休憩行きすぎよね。
四ノ原:課長が席立ってるとき、電話とってるの二見さんですしね。
二見:はい。ご自身の作業が滞るだけでなく、周囲の人間に負担を強いています。あとすごく臭い。
伍代:……生産性ねぇ。
一宮:臭いっていったらパートの山本さんだって化粧の匂いすごいじゃないの、あれはどうなのよ。
二見:もちろん山本さんのにおいも問題だとは思っています。どうにかできませんかね。
三村:においの問題はデリケートというか、指摘しづらいですよね……。
二見:でもこの会社、喫煙者が多いので喫煙ルームがなくなれば大半の匂い問題は解決します。
一宮:ぐっ。
三村:私も課長ほどじゃないけど一日四回くらいはタバコ吸いに出てるから、申し訳ないな……やっぱり喫煙ルーム、ない方がいいのかも。
四ノ原:つい話し込んじゃうんですよねー! 他部署の方も来るのでいろんなお話聞けるってのもありますし。私も喫煙ルームで一宮先輩に営業の極意とか教わってましたしね。懐かしいなぁ。
一宮:そうなの! 喫煙ルームは情報交換の場にもなってるんだって! オフィスじゃ雑談しにくいけど、喫煙ルームで上の人から経験聞いたり、ちょっとしたアドバイスとか悩み聞いてもらったりとかするわけ。そうやって交流も深まるし、知識や経験は継承されていくんだよ。
伍代:それってぇ、非喫煙者には継承されなくてもいいってことです?
一宮:それは……。
伍代:会社の方針で去年から飲み会も減りましたしねぇー。
三村:たしかに喫煙ルーム以外で雑談ができるときってお昼休憩と始業前、終業後くらいですもんね。
二見:その知識とかいうのは非喫煙者も含めて全員に共有されるべき内容なのでは?
一宮:でもそういうのって雑談のなかから生まれてくるもんだし、改めて言うことでもないっていうか、聞いてるこっちが勝手に拾い集めるようなもんだからさ、周知とかできないんだよ。
四ノ原:そう考えると喫煙ルームがあるメリットもあるのかな?
伍代:でもですよぉ? それが「喫煙」とつながってる必要ってあるんです?
三村:うーん、休憩室でも現にそういう会話は生じてるわけですしね。
二見:そうですよ、喫煙室である必要はないです。そして約二十パーセントの業務時間の損失より、その知識の継承とやらで得られる生産性が上回っていないとまかり通りませんよね、その理論。
一宮:そ、それは……。
二見:どうですか、一宮さん。証明できます?
一宮:し、四ノ原っ。
四ノ原:元喫煙者としては耳が痛いです。
伍代:……うーん、そもそもですけどぉ、一日九十分の「損失」っていうけど、ほんとに損失かどうかってどうやってわかるの?
二見:はぁ? 物理的にその時間仕事してないんですから損失じゃないですか。
三村:二見ちゃん、落ち着いて。どういうこと?伍代さん。
伍代:例えばですけどー、一宮サンみたいにー、完璧で重度の救いようがないニコチン依存症の方々はー……。
一宮:言い方。
伍代:ニコチンが切れるとイライラするわけじゃないですかー。
四ノ原:確かに。一宮先輩は分かりやすいですよね。これヤニ切れてんなーって。眉間にしわ寄りますもん。
一宮:え、マジ?
四ノ原:マジっす。
一宮:いやあああ!
三村:そうね、井上課長も機嫌悪くなるし、経理の松下さんもタイミング悪いとすごく雑な対応されたり。
伍代:んー。他人が暴言を吐かれるのを見るだけでも処理能力が落ちるって話もありますしねぇ。
二見:それがなにか?
伍代:ニコチン中毒のみなさまは、タバコを吸わないことで生産率が下がるってことですよぅ。
二見:なっ。
一宮:そうそうそう! ありがとう伍代ちゃん~! タバコを吸うことで頭もスッキリするし生産性が上がるの! だからむしろ喫煙ルームは近くにあるべきだしタバコ休憩も認められるべき!
三村:うーん、私は重たいのは吸わないけど、やっぱり長時間デスクに座って集中するのって大変よね。タバコ行くときにちょっと伸びしたりストレッチしたりしてリフレッシュしてるもの。
四ノ原:あーわかります。禁煙しはじめて席立つ口実がなくなっちゃってから、全然集中できなくて。タバコやめてすぐだからかなって思ってたんですけど、ニコチンパッチとかガムとかは使ってるんで、ヤニ切れのタイミングじゃないなって。最近自分の集中続くタイムが分かってきたというか。ちなみにあたし一時間もちません。
二見:……普通、四時間くらい集中できますでしょう?
伍代:それは二見さんが過集中できるタイプだからですよぉ。少なくともうちは無理。一時間くらいが限度でーす。
二見:そうなの!?
三村:二見ちゃん就業中は鬼のように書類さばいてるもんね……。尊敬しちゃうな。
二見:普通だと思ってた……。
三村:才能よ、才能。
一宮:うちの会社はもともと喫煙者が多くて喫煙ルーム以外禁煙になったのもここ数年の話なんだよ。前はデスクで仕事しながら吸ってたんだから。
三村:そうね、その時はタバコを吸う、イコール休憩、とはだれも思ってなかったよね。
一宮:そのとおり。しかも、タバコ吸ってるときは頭がさえていろんなことを思いつくわけ。喫煙ルームでただぼーっとしてるだけじゃないの。頭は仕事のこと考えてる。
二見:うっ……。
四ノ原:タバコを吸わない方が生産性が下がる、か。管理職の半分くらいは喫煙者ですし、場の空気見てる限り、体感では「あるな」って思っちゃいました。
一宮:はい! 現状、喫煙ルームがなくなったほうが生産性は下がるし、九十分も無駄にしてません! これでどうよ。
二見:……そ、そんなのエゴじゃないですか。
一宮:お、どうした?
二見:タバコを吸うことで生産性が上がるってさっきおっしゃってましたけど、喫煙習慣があることでそもそもの生産性が低くなっているってこともあるんじゃないですか?
伍代:二見さんするどいですねぇ。喫煙直後は酸欠のため思考能力が落ちるとか言われてますですよん。
二見:頭がスッキリするのもニコチン切れでそもそも低下した部分がタバコ吸って摂取することによって解消されるってだけですよね。
四ノ原:た、たしかに……禁煙始めてから体の調子がいいのは否定できない……。
一宮:うぐ。
二見:不機嫌になったり、怒鳴り散らしたり、雑な対応をするのだって、本人たちが感情コントロールできてないからですよね。自分で自分の機嫌をコントロールするのは大人として当然のことですよね。
一宮:うぐぐぐぅ……。
四ノ原:でたぁ、二見さんの、ド正論パンチ三段構え。
三村:これは、ちょっと反論できないわねぇ。
四ノ原:言ってることは正しいんですよね、マジで。
二見:いっそ禁煙プログラムを喫煙者全員に強制した方が会社のためなんじゃないですか?
一宮:ぐはぁ!
三村:二見ちゃんそれくらいにしてあげて! 一宮さんのライフはゼロよ!
四ノ原:……強制かあ。結構カネかかりますよ、禁煙プログラム。
二見:では会社がいくらか補償すべきです。あとは、喫煙者は今後採用しない、とか。
一宮:そ、そんなの差別だし違法だって!
三村:んー、休憩時間は自由にさせなきゃいけないから、休憩時間まで縛るのはできないんじゃないかなあ。
四ノ原:でも昔イタリアンでバイトしてたとき、うちの店は休憩中の喫煙も禁止されてましたよ。タバコの匂いを残したまま客の前に出るなって。
三村:そっかぁ。そうね、そういう場合もあるね。事情があれば休憩中も禁止にできるのね。
一宮:えぇ!? で、でも、禁煙プログラム強制は、会社がプライベートに口だすってことじゃん、それはなんか違くない!?
伍代:そうですねぇ、雇用契約で制限できるのは勤務時間内だけですからねぇ。
三村:伍代さん、ちゃんと知ってるのねえ。
伍代:いろいろと、やり合ってきましたから。てへ。
一宮:喫煙者を採用しないっていうのはさすがに違法でしょ? ね、伍代さん、そうだよね!
伍代:うちに頼るんですかぁ? ま、会社にも採用の自由があるので残念ながら違法ではないですねぇ。
二見:ほら! 伍代さんもこう言ってる!
伍代:二見さん? あなたもですか? うちグーグル先生じゃないです。
三村:伍代ちゃんすごいすごい。
四ノ原:なんでも答えを知っている、そこに痺れる憧れるぅ!
伍代:……四ノ原さんジョジョ好きですか?
四ノ原:あっ。
伍代:……ふるえるぞハート。
四ノ原:……燃え尽きるほどヒート!
伍代:刻むぞ!
四ノ原:血液の!
伍代:(同時)ビートォ!
四ノ原:(同時)ビートォ!
0:間
一宮:いや黙ってピシガシグッグしてんじゃねえよ! 画風変わってんぞおい。
伍代:すみませんつい。
四ノ原:すみませんつい。
三村:でもこうなると、どうするのが一番みんなにとって幸せなのかしらねえ。
二見:……撤去でいいじゃないですか。
四ノ原:あたしはどっちの気持ちもわかるからなあ。喫煙者が多いって実状もあるし。
一宮:まあタバコ休憩に対して不公平感があるのは、理解できるしなあ。
三村:ねえ、みんなが休憩できたらいいんじゃないの?
一宮:ん?
三村:ほら、タバコ休憩と同じように、お菓子休憩とかコーヒー休憩とかできたらいいんじゃない?
一宮:なるほど?
二見:でもそうしたら今は喫煙者だけの九十分の損失が、全員に起こるってことですよ。
四ノ原:いや、そうはならないんじゃない? 小休憩を入れることで、例えば一時間の集中力とか処理能力が上がるなら短時間にぱぱっとやっちゃう方が効率はいいし。
二見:で、でも匂い問題や健康問題は解決しません!
伍代:におい問題はぁ、やっぱ化粧とか体臭も含めて別で対応すべき案件な気がするですなぁ。
二見:うっ。非喫煙者なのに! 伍代さんはどっちの味方なんですかっ。
伍代:どっちの味方とかないですよぉ。うちは、より良くするにはどうするか考えたいだ・け!
三村:大人なのねぇ。
伍代:いやだなあ、うち一番若手ですよぉ。
三村:お洋服とか髪の毛とか派手だから苦手だなって勝手に思ってたんだけど、見直しちゃったわ。
伍代:あはー。よく言われますぅ。
一宮:うーん……とりあえず小休憩全体実施の案と、禁煙プログラム推奨の案と、匂い問題について上にあげてみるよ。もうちょいいろいろ詰めないとダメだけど。それでどう? 二見。
二見:うう……。
一宮:私たちもちゃんと一番いい方法考えるよ。ごめんね。
二見:……わかりました。意見書できたら見せてください。
0:間
伍代:ところでみなさん。
四ノ原:どした?
伍代:昼休憩、あと五分で終わりますよん。
一宮:え。
二見:あ。
三村:あらー。
四ノ原:あああ! お昼ご飯! 食べてない!!

2020.10.22.

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