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『サクラサクリファイス』【♂2:♀3】30分

概要

こちらの作品は、ナンカダレカ・リーディング公演「緩解のリーディング4本立て◇ 霜響桜美ーそうきょうおうびー」のために書き下ろされた作品です。

黒崎ろく(プロット作成)と、ごまさん(本編執筆)による共作です。
▶ごまさんの台本サイトはこちら!

  • 所要時間:約30分
  • 人数:男性2、女性3
  • ジャンル:民俗ホラー

登場人物

  • 長女
    コノハナサクヤヒメの一族の末裔。巫女。効率主義
  • 次女
    コノハナサクヤヒメの一族の末裔。巫女。内気。
  • 三女
    コノハナサクヤヒメの一族の末裔。巫女。楽観的
  • 男A
    長女の元夫。幽霊。
  • 男B
    男Aの後輩。男Aを探しにきた。

本編

長女:それでは、 今日のこの出会いに

全員:かんぱーい!

    次女だけ少しおずおずと「か、 かんぱい」ぐらい

男B :声をかけていただいて、 ありがとうございます。実はこういう場に参加するのは初めてでなにが

なにやら。

男A:せっかく来たんだから、 楽しまなきゃ損だぞ。

長女:私たちのほうこそ、 ご一緒していただけて良かったです。この子がぼーっとしてる間にどんど

んペアになっちゃって取り残されてたんですよ。

次女:姉さん、 そういう事言わないでよ。

三女:ダメだよお姉ちゃん。がっつりアピールしてかなきゃ。

男B:皆さんは、 姉妹なんですか。

長女:はい、 私が一番上で。

次女:真ん中です。

三女:愛され気質の三女でーす。

男A:こいつの会社の先輩でーす。

男B:僕は一人っ子なので、 兄弟がいるのは羨ましいです。

長女:長男って事ですね。

三女:あれだ、 家督を継ぐ、 的な。

男B:継ぐような家督はありませんよ。

男A:お前の父ちゃんも俺たちも、 ただのサラリーマンだもんな。

長女:本当にないんですか、 家督。

男B:ないですないです。ごく一般的な家庭ですよ。

三女:えー、 仕事なに?

男B:しがないサラリーマンです。

三女:そういやどこ住んでんの。この近く?

男B:いえ、 東京に住んでまして。ここには新幹線で。

長女:東京にはお一人で?

男B:はい。

長女:ご両親はご健在ですか?

男B:ええ、 病気もせず元気に暮らしてます。

次女:ちょっと二人とも。そんなに色々聞いたら大変でしょ。

男B:僕は大丈夫ですよ。

長女:将来家族になるかもしれないんだから気になる事は聞いておかないと。

三女:お姉ちゃんが何にも喋んないから代わりに場を繋いであげてるんだよ。

男A:喋る隙を与えてないけどね。

男B:三人ともお相手を探しに?

長女:いえ、 この子だけです。私たちは付き添い。

三女:三人とも独身ではあるけどねー。

男A:え、 独身?

長女:閉鎖的な場所なので、 年頃の娘が独り身だと近所の方々が何かと聞いてくるんですよ。

三女:「街コン」って言ってるけど、 村だから、 村。

長女:ずっと相手を探してるんですけどこの子奥手で、 なかなか難しくて。

男A:お姉さんとしても心配ですよねぇ。

長女:ちょうどこの街コンが開催されると知って、 勝手に応募しちゃいました。

次女:私はまだそういう事は考えられないって言ってるのに、 二人が強引に。

三女:お姉ちゃんを思う、 この健気な妹心が分かんないかなぁ。

長女:少ーーーし悪い気がして、 こうして付き添ってあげてるんでしょ。

男A:仲が良くて楽しそうな姉妹だな。

男B:皆さん、 仲が良いんですね。

次女:うるさいだけです。

長女:なぜわざわざ、 こんな辺鄙な村に?

男B:あ、 えっと⋯⋯桜が綺麗だって聞いて。

次女:たぶんこの桜の事だと思います。村の名物なんですよ。

三女:この街コンも桜を見ながら運命の出会い、 的なヤツだし。

男A:確かにやたらに綺麗な気がする。というか前にも見た事があるような

男B:確かにとても綺麗ですね。この桜の下なら、 運命の出会いもあるかもしれまんね。

三女:えー、 でもお兄さんめっちゃモテそうですよね。街コン参加する意味なさそう。

男B:そんな事ないですよ。

長女:今まで何人とお付き合いしました?

男B:どうでしょう、 あまり多いほうではないと思います。僕もどちらかと言えば奥手で。

三女:実は今付き合ってる人いたりしてー。

男B:いないですって。

男A:お前、 女子の間で結構評判良いよ。

三女:ぶっちゃけどうですか、 お姉ちゃん。

次女:急にやめてよ!

長女:アンタがろくにアピールしないから。

三女:ほら、 言いたい事言いなー。

次女:あの、 嫌だったら他の人とお話に行ったりとか、 遠慮しないでくださいね。

三女:ちょっとー!テンション下がるー!

長女:なんかごめんなさい。

男B:いえ、 落ち着いてて素敵だと思いますよ。一緒に居て安心できるというか、 僕は好きです。

次女:え。

長女:あら。

三女:おー?

男B:あれ?僕今、 あ、 えっとなんか上手く頭が働いてないっていうか。

男A:フーフー!お似合いだぞお二人さーん!

男B:なんだろうな、 ちょっとお水貰ってきますね!

    (男B、 水を取りにその場を離れる)

男A:⋯⋯実はうっすら思ってたんだけどさ。もしかして俺の声、 聞こえてない?

長女:どう、 いけそう?

次女:分かんない。

三女:完全な脈ナシではなさそうじゃん。

長女:ちゃんとやってよ。もうすぐで丸一年経つ、 結構ギリギリなんだから。

三女:この三年間、 彼氏すらできなかったお姉ちゃんにはハードル高いかもね。

男A:お、 秘密の作戦会議かー? そんなの俺が聞いちゃっていいのかなー?

長女:付き合ってお互いを知っていく、 なんて余裕はないよ。

三女:お姉ちゃんとの相性は良さそうな気するけど。

長女:私も良い人だと思うよ、

次女:私なんかと結婚する気になってくれるかな。

三女:お姉ちゃんがその気にならないとどうしようもないじゃん。

長女:私たちはどっか行って少しの間二人きりにするから。しっかり距離詰めなよね。

次女:分かった、 頑張る。

三女:男なんてさ、 ちょーっと体触れば即落とせるから。

長女:ちょっとアンタ、 まさか。

三女:ごめん語弊。桜様に誓って、 純潔は守っておりますよー。

次女:びっくりしちゃった。

長女:まあ、 守らなきゃいけないって訳でもないけどね。

三女:え、 そうなの。

男A:聞こえないどころか姿も見えてない感じ? どゆこと?

     (戻ってくる男B)

男B:お待たせしました。

次女:お帰りなさい。

長女:私たちも少し席を外しますね。お酒取ってきます。

男B:あ、 行く前にお聞きすれば良かったですね。

長女:気にしないでください、 では。

三女:ごゆっくりー。

    (どこかへ行く長女と次女)

男B:⋯⋯さっきはすいません、 変な事を口走って。

次女:いえ、 大丈夫です。

男B:忘れてくださいね。

次女:でも、 その、 嬉しかったです。

男B:あ、 えっと⋯⋯それにしても、 本当に綺麗な桜ですね。他の桜とは違う、 不思議な魅力がある。でもまだ二月なのに、 こんなに咲いてるなんて。

次女:村の人間は「桜様」と呼んでます。まず桜様が花を咲かせて、 そのエネルギーが国中に流れて行くんです。全ての桜は桜様から生まれてる。この国の桜の源なんです。

男B:なんだか、 壮大な話ですね。

次女:コノハナサクヤヒメが、 この国で一番最初に咲かせた桜ですから。

男B:コノハナ⋯⋯?

次女:お花の神様です。とても綺麗だそうですよ。ニニギノミコトという神様が一目惚れしてサクヤヒメのお父様、 オオヤマツミ様は、サクヤヒメのお姉様、 イワナガヒメ様と一緒にならという条件で結婚を許したんです。でもイワナガヒメ様は、 あまりお綺麗ではなくて、 ニニギノミコトはイワナガヒメ様だけを送り返した。そしてそのせいで、 イワナガヒメ様の怒りを買ってしまった。だから

男B:⋯⋯だから?

次女:すいません急にこんな昔話みたいな!

男B:いえ、 あなたのお話なら、 本当なんだろうなって思います。それに、 神様の桜だったら、 この神秘的な雰囲気も納得できます。

次女:信じてくれるんですか?

男B:あなたはきっと、 嘘をつかない。

次女:そんな事、 ないですよ。

男B:でもそうですね。どうせなら、 あなたの話を聞きたいです。

次女:お話できるような事、 ありません。四人でいても分かるでしょう。姉さんはなんでもできるし妹

は明るくて可愛くて、 誰にでもすぐ愛される。私は、 考えてる事が分かんないって言われて、

上手くできなくて何も無いんです。

男B:もちろん、 お姉さんも妹さんも素敵だとは思いましたけどでも僕は、 あなたと一緒に居たいです。

次女:お世辞言っても仕方ないですよ。

男B:お世辞じゃないです。僕の事を考えて、 本心から話してくれているのが伝わってくる。ただ少

し、 まわりの事を考えすぎちゃってるんですよ。

次女:自分でも、 よく分かりません。

男B:これから分かってあげればいいじゃないですか。僕は、 あなたの事をもっと知りたいです。

次女:私も、 もっとあなたと一緒に居たい。

男A:何この雰囲気。なんかヤな感じする。もうちょっと慎重になったほうが良くない?

男B:ここって、 お付き合いしたいって思えた人がいたら、 その人のナンバープレートの番号を主

催側に伝えるってルールですよね。それでお互いの番号を言ってればカップル成立、 みたい

な。

次女:そうですね。

男B:あの、 もし良ければ、 お互いの番号、言いに行きませんか。

次女:私でいいんですか。

男B:あなたがいいんです。

次女:分かりました、 行きましょう

    (次女と男Bは街コン本部に向かう)

男A:ねえちょっと!タンマ!やばいってばぁ⋯⋯

    (戻ってくる長女と次女)

長女:お待たせしましたー、 って、 あれ二人はどこ行ったの。

三女:マジだ、 居ないじゃん。えー、 余計な事してなきゃいいけど。

長女:大丈夫でしょ。結局あの子は、 お役目には逆らえない。

三女:姉貴が去年殺した人って、 街コンで出会ったんだっけ?

男A:殺した?

長女:ううん。でも、 桜様が目当てで村に来た人。老人どもが「知らない人間が桜様の近くにいる」って騒いでて、 見に行ったら桜様を見上げてたの。声掛けたらやけにグイグイ来て、 タイミング的にもちょうど良かったからその気にさせて、 結婚して、 桜様に捧げた。

男A:桜に、 捧げる⋯⋯

三女:そういや、 私が一昨年やった奴も、 出会ったのは桜様きっかけだったかも。運命すぎない?

長女:もしかしたら、 捧げる人間を桜様が選んで呼び寄せてるのかもね。

三女:えー、 じゃあ夫にする相手も自分じゃ決めれてないって事?不自由すぎて鬱。

長女:神様の呪いだからね、 それくらいあるでしょ。

三女:ねえ、 ほんとなの?二十五歳を迎えたら、 一年に一回、 桜様に夫を捧げないと、 急に老けち

ゃうって。

長女:本当だよ、 私見たから。

三女:マジで?

長女:アンタが産まれる前に死んじゃったおばあちゃん。お母さんに苦労させないようにって、 ずっ

とお役目を背負ってたの。本当に、 お母さんと双子なんじゃないかって思うくらい、 すっごく

綺麗だった。でもある日「疲れた」って言って、 お役目を放棄した。咲いてた花がどんどん散っ

て、 おばあちゃんも異常な速さで、 年齢以上に老けていった。お母さんは急いで継承の儀

式をしてその時結婚してた人、 私たちのお父さんを桜様に捧げた。桜様はすぐに元に戻っ

たけど、 おばちゃんはそのまま死んじゃった。

三女:マジなんだー、 だる。夫を捧げれなかったら自分たち死ぬし、 国の桜全部枯れちゃうとか責

任重すぎ。

長女:仕方ないでしょ。私たちコノハナサクヤヒメの巫女のお役目なんだから。それに、 やらなかっ

たら老けるのよ。

三女:老けるほうのがだるいー!

男A:⋯⋯思い出した。俺は、 もう死んでるんだ。超絶綺麗な桜があるって風の噂で聞いて、この村

に来て本当に綺麗だった。見惚れてたら、 桜を守る巫女だって人に声掛けられてやけに意

気投合したんだよなぁ。そういやあの時声掛けてくれたの、 お姉さんでしたね。愛してるって

言ってくれたのは、 嘘だったんですね。わりとすぐ結婚して、 こいつらに殺されて殺されたあ

とは、 身体をバラバラにされてこの桜の下に埋められた。

三女:ギリギリだけど、 今年もなんとかクリアできそうじゃない?

長女:本当にギリギリだけどね。村長に言って、 街コンを開かせて正解だったわ。

三女:桜が枯れちゃったら村も大損害だからね。村長焦ってたのウケた。

男A:次の生贄は俺の可愛い後輩って訳か。ふざけんじゃねぇぞ。きっと俺はあいつを助ける為に、

今ここにいるんだ。

長女:いけそうな雰囲気あったし、 二人が戻ってきたら婚姻の儀を済ませましょう。それから桜様に

捧げればおそらく大丈夫。

三女:村長から貰ったお茶には薬入れといたよ。

長女:ありがとう。眠らせて、 解体して、 埋める。いつもの段取りでスムーズにやってね。

三女:かしこま。

男A:アイツがそのお茶を飲んじまったら終わりってか。くそ、 どうにか阻止しねぇと。

   (戻ってくる次女と男B)

次女:あれ、 戻ってたんだ。

男B:すみません、 何も言わずに席を離れてしまって。

男A:戻ってくんな!今すぐ逃げろ!

長女:おかえり、 どこ行ってたの。

次女:本部に、 気になった人の番号伝えに。

三女:もしかして、 お互いに?

男B:はい、 お恥ずかしながら。

三女:えー!急展開じゃーん!もうそんな感じなんだ。

長女:大事にしてあげてくださいね。

男B:僕には勿体ないですけど。

男A:勿体なくなーい!騙されるなー!

三女:結婚したら村に住むんですかー?

次女:まだそんな話する段階じゃないよ。

男B:もし良ければ、 ここで暮らしたいと思ってます。のどかで自然豊かで、 穏やかな生活ができそ

うなので。

次女:そんな事考えてくれてるんですか。

男B:はい、 二人でのんびり暮らしたいなって。

男A:全然のんびりじゃないよ!村ぐるみで人殺しに加担してんだよ!

三女:この村の仲間入りするなら⋯⋯さっき村長のところ行って、 名物の桜茶淹れてもらってきたん

です。ここで作ってるんですよ。良かったら飲んでください。

男A:やめろ、 飲むな!

男B:ありがとうございます、 良い香りですね。

男A:桜以外の香り感じない!?薬品みたいな匂いしない!?

長女:さっき、 すごく慌ててたので。飲めば頭がすっきりしますよ。

男B:あー、 そうですね。飲んで自分を落ち着かせます。

男A:落ち着いてほしいけど、 飲んでほしくはない。あーーーくそ!都合よく目覚めろ俺のミラ

クルパワー!やっ!はーーーっ!

男B:っと、 あ!

長女:え

三女:げ

次女:大丈夫ですか!?

男A:え?え?

男B:な、 なんか今、 コップが勝手に飛んで行ったような。

男A:都合よく目覚めた!?

次女:火傷とかしてないですか?

男B:僕は平気です。でもせっかくいただいたお茶が全部こぼれてしまって。

男A:よっしゃー!ざまあみろ!

長女:き、 気にしないでください。

三女:もう一杯あるので良かったらこっちを!

男A:は!?

男B:そんな悪いですよ。

三女:いいからいいから、 どうぞ。

男B:ありがとうございます。

    (長女、 三女にコソコソ)

長女:なにあれ。

三女:村長が、 私たち二人にって二杯くれてたの。薬は予備があったから問題なし。なんかあった

時用の、 さっきよりも強いヤツだけど。

長女:次のほうが確実って事ね。最初からそっち使いなさいよ。

三女:だってちょっとお高いんだもん。

長女:まったくもう、 ひやひやさせないで。

三女:私のせいじゃなくなーい?

男A:まだあったのかよ!くそ、 もう一回!

長女:さ、 コップが飛ばないうちにどうぞ。

三女:一気にグイッと!

男B:なんかすいません。

次女:も、 もしいらなければ、 無理しなくていいですからね。

男B:大丈夫ですよ。

男A:そらもう一回!はーーーっ!

男B:うわなんかゾワッてした今。

男A:それ俺!俺俺!

長女:まだ寒いし、 体が冷えたんでしょう。桜茶を飲めば温まりますよ。

男B:ありがとうございます、 いただきます。

次女:あ⋯⋯

男A:あ、 あああ⋯⋯

三女:どうですか?

男B:うん、 桜の風味と少しの塩味を感じます。とても美味しいです。

長女:それは良かった。

男A:ごめん、 ごめんな。

男B:確かに、 頭の中がクリアになった気がします。これなら先輩を探せるかもしれない。

男A:へ?

長女:先輩を探す?

男B:去年、 会社の先輩がここに来てるはずなんです。「知る人ぞ知る、 超絶桜が綺麗な場所があ

る」って言ってました。「今から行ってくる」って連絡はもらったんですけど、 そのあとが行方不

明なんです。ご家族の方から話聞いたり、 移動履歴調べたりしてこの村が目的だと分かった

んです。

男A:お前、 俺を探す為にここまで来たのか

次女:そうだったんですか、 心配ですよね。

男:先輩がどこに行ったか、 手がかりだけでも見つかればと思ってて。心当たりはありませんか?

長女:さあ、 ごめんなさい、 分からないですね。

三女:見慣れない人がいたら目立つはずだけど。

男A:しらばっくれてんじゃねぇ!殺した人間の事覚えてねぇのかよ!

男B:そうですか⋯⋯村の方たちに聞けたりしないですかね。

次女:お年寄りが多いので、 去年の事を覚えてくれてるかどうか。

    (三女、 長女にコソコソ)

三女:ねえ、 その先輩ってさ、 去年姉貴が桜様に捧げた人じゃない?

長女:十中八九そうだろうね。時間がかかると、 それだけやっかいになるかも。

三女:たぶん薬がそろそろ効くんだよね。さっさと婚姻の義結ばせて、 さっさと殺しちゃおうよ。

長女:そうね。先輩に早く会えて彼も嬉しいでしょ。

三女:家族孝行じゃん、 やさしー。

    (長女、 次女にコソコソ)

長女:このまま予定通りやるから、 ヘマしないでね。

次女:え、 でも。

長女:彼が言ってる先輩は、 去年私たちが桜様に捧げた人よ。だったら、 早く桜様の元で会わせて

あげたほうがいいでしょ。

次女:姉さん、 知ってたの?

長女:私だって今知ったよ。こんな繋がりがあるのも、 桜様のお導きかもね。

次女:私たちが先輩を殺したなんて、 なんて言えばいいか。

長女:言っても言わなくても結果は同じ。いいから、 さっさと進めるよ。

次女:姉さん待って。

長女:いいから。

長女:あの、 突然で驚かせちゃうかもしれないですけど今この場で、 妹と婚姻の義を結んでもらえ

ませんか?

男B:え、 本当に突然ですね。次女  大事なことなので無理やりにはしたくないんですけど。

三女:お姉ちゃんとの結婚は、 先輩探しの為にもなると思うんですよー。

男B:どうしてですか?

長女:妹と結婚して身内になれば、 この村で調べやすくなります。村の外からの人にはどうしても身

構えてしまう方が多いですから。

三女:私たちも協力できるかもしれないし!

男A:やめてくれ、 お願いだから。

男B:こんな急に、 いいんですか?

次女:あの、 私は

三女:いいよね、 お姉ちゃん。

長女:おめでたい事は早いほうがいいでしょ。

次女:私は、 今すぐじゃなくても。

男B:嫌ですか?

次女:嫌じゃないです、 そんな事全然!でも

男B:僕は、 あなたと夫婦になりたいです。

次女:私でいいんですか。

男B:あなたがいいんです。僕と、 結婚してください。

次女:はい、 お願いします。一緒に先輩の事、 見つけてあげましょう。

男A:お前たちがやったんだろ。

男B:ありがとうございます。心強い家族ができて、 こんなに幸せな事ありません。

長女:私たちも嬉しいです。

次女:この村では、 この桜の下で結婚式するの。

男B:桜様、 ですよね。 二人で居る時に少し話してもらいました。

長女:必要なのは「宣誓」と「祝福」。二人が夫婦になる事を宣言して、 それを私たちがお祝いすれ

ば、 婚姻は成立する。

男B:役所に届け出たりは。

三女:堅苦しいのは後回し!大事なのは気持ちでしょ。心で繋がれば、 書類なんか必要ないの。

次女:私に続いて言ってくれればいいから。

男B:分かった。

男A:駄目だ、 やめろ。

長女:さあ、 桜様に誓って。

次女:私はこの人と夫婦になる事を誓います。

男B:僕はこの人と夫婦になる事を誓います。

長女:二人とも、 おめでとう。

三女:末永くお幸せにー。

男A:やめてくれ。

次女:⋯⋯ありがとう。

男B:ありがとうございます。

三女:はい、 結婚式おしまーい。

男B:なんだかあっさりですね。

三女:これだけで十分だから。

長女:桜様はあなたを、 この子の夫であると認めました。よってこれより、 あなたを桜様に捧げます。

男B:え?捧げるって、 なにが⋯⋯う、 あ

三女:予定通りー。 マジ楽勝。

次女:ごめんなさい⋯⋯

男B:なにが、 起きて

次女:サクヤヒメ様の話はしましたよね。この桜は、 ニニギノミコトに捨てられて、サクヤヒメ様に嫉妬

したイワナガヒメの呪いを受けてるんです。

長女:サクヤヒメの末裔の巫女は一年毎に、自分の夫を桜様の養分として捧げなければならない。

三女:じゃないと、 この国のぜーんぶの桜が枯れちゃうし巫女も二十五歳過ぎてると急にめっちゃ老けちゃうの。いじわるすぎない?

次女:私たちが今の、 コノハナサクヤヒメ様の末裔の巫女。

長女:あなたには私たちの為、 そしてこの国の為に、 桜様にその身を捧げていただきます。

男A:どうしてこいつが、 そんな目に遭わなきゃいけないんだよ。こいつが何したってんだよ!

男B:騙したんですか

次女:最初はそのつもりだったけど、 でも今は。

三女:大丈夫ですよー。ふわふわーって気持ち良くなるだけですからねー。

長女:なにも怖くない。 桜様のみもとに行けるのは、 幸せな事ですから。

三女:あと探してる先輩にもたぶん会えるから。楽しみにしてて。

男B:なんで、 先輩が

三女 :ほら、 起きてるのしんどいでしょ。そのままゆーっくり目閉じちゃいな。

次女:やだ、 いかないで。

男B:く、 そ⋯⋯

三女:おやすみー

次女:⋯⋯ごめんなさい

長女:さてと、 埋めやすいように解体しましょうか。

次女:待って。

三女:ねえ、 早く済ませちゃおうよ。

次女:お願い、 やっぱりこの人を桜様の養分にするのは嫌。すぐに他の人を探すから、 見逃してだ

さい。

長女:無理よ。

次女:お願いします!

三女:は?うるさ。 なにマジになってんの。

長女:もう間に合わない。これ以上遅くなれば、 この国の桜は全て枯れて私たちも急激に老けてす

ぐに死ぬ。ご先祖様たちが必死に守り続けてきたものが、 あなた一人の我儘で無駄になる

の。その責任を背負える?

次女:私が、 償って

長女:あなたに何ができるの。

次女:なんでも、 どうにかして

三女:大丈夫だよ、 お姉ちゃん。お姉ちゃんはなにも悪いって思わなくていいんだよ。

次女:でも、 私たちのせいで。

三女:私たちにしかできない事なの。ご先祖さまから受け継いだお役目を守って、 これから先に伝

えていく事だけ考えればいいの。嫌な事は考えなくていいんだよ。

次女:考えなくて、 いいの?

三女:うん。

今は、 お兄さんが苦しまないように、 早く終わらせちゃお。

次女:分かった。

三女:ほら、 姉貴。 やろ。

長女:⋯⋯ありがと。

三女:それほどでもー。

女性陣:よいしょ、 よいしょ

よいしょ、 よいしょ

腕切れたよ、 ちょっと脚押さえて、 腰めんどい

頭取ったどー!

    など、 解体のセリフめいめいに

    次女はずっと「ごめんなさい」でも良し

男B:う、 あ⋯⋯?ここは、 どこだ。真っ暗で何も見えない。急に眠くなって、 それで

男A:お、 やっぱ起きるんだな。まぁ俺もそうだったけど。

男B:先輩?

男A:よ、 お久しブリーフ。

男B:先輩、 どこ行ってたんですか。俺、 先輩を探しにここまで来て。

男A:うん、 全部聞いてた。お前らの後ろで。

男B:聞いてた?

男A:正確には、 お前らの足元で。

男B:足元って事はまさか、 先輩も。

男A:おう、 去年やられてな。

男B:それは、 どこを探しても見つからないわけだなぁ。

男A:ごめんな。俺のせいで、 お前まで巻き込んで。

男B:眠らされてからの記憶がないんですけど、 やっぱり僕も殺されたんですね。

男A:頑張って止めようとしたんだぞ。一回コップ落としたの、 あれ俺だから。

男B:だったら最後まで頑張ってくださいよ。

男A:無茶言うな。

男B:僕を生贄にして彼女たちが老いないように、 というのは間に合ったんでしょうか。

男A:そこ気にする?

まあ、 大丈夫なんじゃないの。お前が養分としてここに居るのが、 何よりの証拠だろ。

男B:そっか、 それなら良かった。

男A:お前、 殺されてるんだぞ?

男B:僕が犠牲になってあの人が助かるなら、 それでいいです。

男A:聖人君子かよ。

男B:僕が愛したいと思えた人ですから

男A:成仏できたら天国行きだったかもな、お前。

男B:ここに居るのって、 先輩だけなんですか。

男A:そんな事ねぇよ、 ちゃんと見てみな。

男B:?⋯⋯うわぁ!?い、 いつの間に、 こんなたくさん。

男A:最初からだよ。お前が来るずっと前から、 俺らはここに居た。

男B:全員、 桜の養分にされた人たちですか。

男A:成仏する事は許されず、 イワナガヒメを満足させるためだけに存在させられてる。

男B:なんだか皆、 心ここに在らずって感じですね。ぼーっとしてるのに、 幸せそうにも見えるという

か。

男A:少しずつ自我、 っつうか意識がなくなっちまうんだと。ここに来た俺にいろいろ教えてくれたの

は、 あそこにいる人。すっかり物言わぬ亡霊だよ。

男B:じゃあ、 いつかは先輩とお話できなくなっちゃうんですか。

男A:そうなるなー。もしかしたら俺がさみしくて、 お前を呼び寄せちゃったのかも。

男B:仕方ないですね。 どうしようもない先輩の世話をするのも、 できる後輩の役目ですよ。

男A:死んでまで後輩の世話になるなんてな。

男B:なるべく長く、 意識保っててくださいよ。つまんないんで。

男A:そのつまんないのも、 いつかは感じなくなるさ。

男B:遅かれ早かれ物言わぬ亡霊の仲間入りですか。

男A:どうせもう、 どうしようもないんだからさ。のんびりやろうや。

男B:そうやって積み重なって、 ここができあがってるんですもんね。とんでもない場所に呼び寄せ

られちゃいましたよ。

男A:ようこそ、 桜の園へ。

男B:嬉しくないですね、 その歓迎。

おわり

2026.1.5.

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