概要
ついに魔王城へたどり着いた勇者一行。血を血で洗う最終決戦が今、幕を明け……ないの!?
「殺し合いはもうたくさんだ、『話し合い』をしよう」と魔王は言う。
※僧侶と盗賊は生き別れの兄弟、魔王と魔法使いは恋に落ちるというギミックが成立するようにしていただければ性別は正直どちらでも構いません。
本作品は、2022年開催、第一回ラジドリコロシアムというボイスドラマの大会にチーム「KOE-NOS」にて出展した作品の脚本です。編集用のト書きをそのまま残しています。
ラジドリコロシアム主催ページ
- 所要時間:約15分
- 人数:7人 男性5(うち1=少年)、女性2
- ジャンル:ファンタジー、議会もの
登場人物
- 魔王
まおう。とっても強い顔面。APP18。 - 勇者
ゆうしゃ。とっても強い腕っぷし。STR18。 - 僧侶
そうりょ。とっても清い心。POW18。 - 魔法使い
まほうつかい。とっても強い魔力。OPP18。 - 盗賊
とうぞく。とっても素早い身のこなし。DEX18。 - 商人
しょうにん。とってもかしこい話術。EDU18。 - 遊び人
あそびにん?とってもしぶとい。INT18。
本編
■S1■アバンタイトル
BGM in ☆クライマックスシーン感
魔王:(フハハ!) よく来た、勇者よ。
勇者:魔王。あんたは必ず倒す。みんな行くぞ!
魔法使い:ええ!
僧侶:はいっ!
勇者:うおおおおお!
BGM co
魔王:いや、戦いはいい。
僧侶:え?
魔王:ぶっちゃけ飽きたのだ。殺し合いとか。
魔法使い:は?
魔王:だから今回はぁ、
SE 重たいドアが閉まり、鍵がかかる。
魔王:「話し合いをしよう」
BGM in
☆キャラ紹介 カットインのイメージ(スマブラの参戦!のやつ)
勇者:魔王を倒す。もう失敗はできないんだ。
僧侶:悪は正さねばなりません。神の御心のままに。
魔法使い:アタシの魔法は、強くてカッコイイひとのためにあるの♪
商人:某は、自由に商売したいだけなんですなあ。
盗賊:好きで盗賊になったんじゃない。
遊び人:一生あそんでくらしたーーーーい!
魔王:さあ、人間ども。進みたくば、踊り続けろ。
BGM out
■S2■魔王城、玉座の間
魔王:さて、最初の決を採ろうではないか。議題、魔王を殺すべき。賛成か反対か。
勇者:賛成に決まってる!
僧侶:私も賛成です。
魔法使い:勇者くんにあわせる♪
商人:(悩み)某は…賛成、で、ござる。
遊び人:ちょーーーーっとまって?
BGM in
魔王:どうした、遊び人。
遊び人:さっきからさ、なんで殺される本人が取り仕切ってんの?
魔王:会議に司会進行は必要だろう?
一度やってみたかったんだ。結構楽しいぞ。
遊び人:その邪悪な兜から聞こえていい声色じゃないんだよな! みんなも、何で受け入れてんの!?
盗賊:最初に説明があったろ。「人間は魔王を殺すべきか否か」
全会一致で決まるまで、この城から出られない。そういう「契約の魔法」だ。
商人:条件満たさば効果は消えず、禁則破れば「ぺなるてい」。
平易なものなら、我ら商人も使いまするが。
相手の同意、なくして契約させるなんてぇ、とんと聞いたことがありませんなぁ。
魔王:すごいだろう? さすが魔王だろう?
☆合コンで本気の品定めする女(ヒソヒソ)
魔法使い:こんな魔法が使えちゃうなんて、魔王って勇者くんより強いのかしら?
僧侶:魔法使いさん、まさか。
魔法使い:やぁね僧侶ちゃん!(バシッ&僧侶AD)
あんな兜で顔隠すなんてブサメンに決まってるわ。アタシ、面食いなのよ!
僧侶:知ってます。だから遊び人さんがくっついてきてるんですもんね。
遊び人:キープ扱いッ そんな、あの夜のあの、おれっち、あの、あれは、ねえ、魔法使いさ、
勇者:うるさぁい!
SE 机を叩く
勇者:王国の期待を背負って魔王を倒すためにここまで来たんだぞ。
今、僕たちは決を採るだけでこいつを倒せる。そうだな、商人。
商人:左様。先ほどの詠唱内容、間違いない。
我々が全会一致で「殺すべき」を選べば、魔王は議決にしたがって、死にいたりまする。
魔王:む、なぜ吾輩に聞かぬ?
勇者:よし「魔王は殺すべき」だ。
間。
勇者:遊び人、どっちだ。
遊び人:え? おれっち? えっと、あのー
盗賊:(食い)反対だ。
僧侶:と、盗賊さん? どうして……っ
盗賊:俺は、魔王に恩がある。
勇者:恩、だあ? テメェふざけてんのか?
僧侶:勇者さん、ダメ!
盗賊:(胸倉つかまれ)禁止事項その1。参加者への攻撃。自傷も含む。発言権を失いたいのか?
勇者:クソッ!
僧侶:詳しく、お聞かせ願います。
盗賊:お前たちに着いてきたのは、魔王に礼を言うためだ。
魔王:む?
☆息交じりで遠く見る感じ
盗賊:故郷を焼かれた俺は、ガキの頃からスラム街で暮らしていた。
SE 鳩時計
魔法使い:3時間後♪(SDキャラ)
■S3■3時間後
ぐったりした面々。女子以外。(アドリブ、盗賊セリフ裏継続)
盗賊:というわけで、あんたのおかげで生き延びることができた。感謝する。魔王。
魔王:正直覚えてないが。その気持ちはしかと受けとった。
商人:吟遊詩人にでも転職したらいかがか……。
遊び人:ぷぇー。
魔法使い:かわいそうな盗賊! アタシそういうの弱いのよォッ!(泣き)
SE 椅子 ゆっくり立つ
僧侶:兄さん?
盗賊:ん?
僧侶:出身地のあたりから薄々感じてはいたのですが、その形見のネックレスは……。
盗賊:これか?
僧侶:私も持ってます! ほ、ほら!
SE 鎖
BGM止め
魔法使い:ここで生き別れの兄妹再会!? 泣いちゃう、アタシ、泣いちゃう。
商人:(☆実況)なんとなんと、組み合わせると、ピッタリだー!
盗賊:お前、生きて……。
僧侶:兄さんっ!
<AD抱き合う二人>
僧侶:(意を決する)わたくし、わたくし、意見を変えます!
SE 衝撃
僧侶:反対に一票!
勇者:はっ!?教会の教えは? 悪はただすべきじゃないのかよ
僧侶: わたくしはどんな形であれ/唯一の肉親である兄を救ってくれた方を、 悪とは呼べません!
僧侶:ああ、悪とは、正義とは、一体何なのでしょう。わたくし、神のお言葉に従ってきました、しかしこれは、この気持ちは……。
盗賊:お前の感覚は間違っちゃいねえよ。
盗賊:俺だって、お前たちに会うまでは、自分のために盗んで奪って、そうやって生きてきた。やられた方から見りゃ極悪人だろうさ。
僧侶:……。
しばし沈黙。
商人:……これにて、4対2ですなあ。
魔法使い:ねぇー、アタシお腹すいちゃった
遊び人:魔法使いさんマイペースゥ。
魔王:休憩にするか。
遊び人:エ?
SE ハンドクラップx2
魔王:昼食を!
勇者:食いもんで釣ろうったって
(☆三段)
魔法使い:ご飯!?
商人:魔界メシ!?!?
遊び人:給仕さん美人!!
■S4■休憩タイム
SE 食器の鳴る音。
魔王:1時間後に再開とする。
魔王:外には出られぬが、城内は見学してかまわぬ。
商人:(独り言だけど籠らない)もぐもぐもぐ。こ、この肉、
柔らかくも弾力あり、さらにかすかな香草のかおり。
口に入れれば、ふわっと広がる脂のコク!
しかし、味付けが勿体のうござる…….塩が悪いのか?
魔王:ほお、ドラゴン肉が気に入ったか。
商人:(飲む)ドラゴン肉ですと!?
魔王:(ドヤ)ああ。我が領内では低級ドラゴンの食用家畜化に成功している。
商人:ちとその話、詳しく。
遊び人:(デヘデヘ)お姉さん、魔族なの? (キリッ)へーそうなんだ、おれっち人間。え? サキュバス? えっえっアーッ
SE 鳩時計
僧侶:1時間後♪(SDキャラ)
■S5■休憩明け
魔王:さて、盗賊の話もあったことだ。再び決を採ろうではないか。
(凄み)魔王を殺すべきか?
勇者:賛成。
魔法使い:勇者くんにさんせーい
盗賊:反対。
僧侶:反対です。
商人:うーん・・・
遊び人:えーと・・・(デヘデヘ)(さきゅばすといっぱつやってきた
商人:(すまなさげ)すまぬ、勇者くん。 反対!
勇者:はァ!?
遊び人:じゃ、じゃあ、おれっちも・・・
勇者:あ゙?(すごみ)
遊び人:ヒィッ
僧侶:これで、2対4ですね。
勇者:まさか本気で飯につられたんじゃねえだろうな。(ガラわるく)
盗賊:(あきれ・哀れ)勇者らしからぬ口調だな。
遊び人:落ち着いて? 飴ちゃん舐めるー?
勇者:貴様を噛み砕く。
遊び人:スンマセンッシタ…
魔王:商人よ。訳を聞こう。
商人:あいわかった。東の果てより身一つ旅立ち、このつづらのみにて商売初め、手腕を頼りにのし上がりたる、某の勘が囁いている
盗賊:始まったか。
魔法使い:始まったわね。
商人:思考が至るその前に、勘定いれるまだ先に
もとより排除していた見込み
王国より禁止されたる、魔族領との交易を
その可能性に挑み、扱いとうござりまする
特に、食材を!
ー
魔王:なんと。吾輩も人間界の食材に興味がある。
商人:(もっとテンポよく)なるほどなるほど。
勝機見出したります故は、人間界の調味料、そして魔族領の素材たち
各地におわす美食家どもは、刺激を求めておりまする。
—
さてこそ、こらぼれいしょん!
必ずウケましょうぞ!
魔王:おお。ではさっそく見積もりを。ふむ。ビジネスパートナーに対して顔を隠し続けるのも不躾なこと。どれ、兜をはずしてと。(SEゴトン)
勇者:商談を始めるな!……お前ら全員、反逆罪だぞ。
遠巻きに見つめる面々。(ドン引きAD)
■S6■魔法使いのターン
勇者:魔法使い、お前ほどの腕があれば、こんな魔法打ち消せるだろ?
なんてったって王立魔導学院・首席様なんだからなあ!?
魔法使い:い……
僧侶:い?
魔法使い:イケメェン!!(椅子ふっとばしSE)
盗賊:は?
魔法使い:はぁん!えっ?ヤバぁい、どストライク!
遊び人:魔法使いさん?
魔法使い:魔王さまっ! どうしてそんなゴツくてダサいメットでお美しいお顔をお隠しになっていたの!?
魔王:なに、これを被らないとサキュバスどもが仕事をしなくなるでな。
魔法使い:あの、アタシ、アタシ、賢者級の魔法いっぱいつかえるのっ! オリジナルも作れるし、結界魔法も得意! あの、だから……
魔王:どうした、(衣擦れSE)申してみよ。
魔法使い:はぁん! お嫁さんにしてください・・・!
遊び人:えええええ!?すっ飛ばし過ぎィ!
勇者:これまでだれのお陰で英雄扱いしてもらえたと思ってんだ!?
魔法使い:アタシ、英雄扱いなんていらない。
魔法使い:賢者と呼ばれた母を持ち、生まれたときから魔法・魔法・魔法! 素敵な恋のひとつも出来やしなかった。
だから決めたの! 一番強くて、一番カッコイイひとのためにこのチカラは使うって!
勇者:一番強いのは僕だろうが
魔法使い:でもアンタ子供じゃない
勇者:うっ
魔法使い:それに魔王さまの<契約魔法>も破れないしぃー
勇者:ウグッ
遊び人:お、おれっちはぁ?
魔法使い:お前は顔だけ。
遊び人:(カタツムリッ)
魔法使い:このダンディズム、これよ、あたしが求めていたのは!
(BGM FO)
しばし沈黙。
魔法使い:ってわけでえ、アタシは国より自分の気持ちを優先する。反対。
■S7■遊び人のターン(3分以内)
盗賊:これで、1対5(いったいご)だな。
勇者:はは、僕は絶対意見を変えないからな。
遊び人:ねえ、なんでそんなに頑ななの。
勇者:魔王を倒すのが勇者の義務だ。あと一歩なんだぞ、邪魔をするなよ!
遊び人:邪魔なんかしてない。みんな自分で考えて、自分の意志で、決めただけだよ。
勇者:……前の勇者は、自分の意志で、魔王を倒さずに失踪した。アイツが逃げたせいで、次に僕が選ばれた。
遊び人:……。(痛いところを突かれた)
勇者:僕が一番魔族を殺してきたんだ。(ぶっ壊れ)お前には分からないだろ。
生きた肉を切る感覚。骨を砕く衝撃。返り血の温かさ。
遊び人:わかるよ。……ごめん、おれっちが…(俺が)元・勇者。
勇者:……え。
遊び人:気づいちゃったんだ。魔王を倒しても、次は魔族を皆殺しにするまで戦わされるって。
だから失踪したことにして、勇者を降りたんだ。
勇者:お前の、お前のせいでッ!(つかみかかる)
遊び人:うん、ごめん。ごめんな。
遊び人:でも言うわ。俺しか言えないからこれ。俺ら、悪くないよ。
だから君も勇者やめちゃえば?
勇者:……それでも僕は降りられない。
もう誰も殺したくないけど、他の誰かにも勇者をやらせたくない。
魔王を倒す以外の道なんてあんのかよ……
盗賊:……共存はできないのか?
勇者:きょう、ぞん……?
商人:たしかに!同じ飯を共に美味いと感じられる、それだけで希望はありますぞ!
僧侶:そうです、話し合いましょう。何度でも。
魔法使い:もしかしたら殺し合うよりキツイかもだけど。
盗賊:魔族も人間も、きっと変わらないさ。
勇者:それは……。
遊び人:だから、殺したくないんだろ。
魔王:それでは、決を採ろう。
SE 鍵開けて、 扉が開く音(重ための)
■S8■エンドロール
ED TM
■キャストコール
勇者:
僧侶:
盗賊:
商人:
遊び人:
魔法使い:
魔王:
■S9■エンディング
魔王:次の議題だ。
「人間界の、現国王を殺すべきか、否か?」
SE ドア閉まる(重ための)
2022.05.22.