概要
東京都内各地に暮らすモンスターたちは、人間に紛れて生活していた。そんな彼らは、10/31、ハロウィンの日に渋谷駅にあつまり、本来の姿で活動する。悪意と悪霊から人間たちを守るために。
※もともとKOE-NOS用書下ろし作品なので中の人の内輪ネタが多分に含まれています。一応知らなくても成り立ちます。ご了承ください。
キャラクターの性別は、うまく言い換えていただければ正直女性でも男性でもかまいません。まーちん(魔女)ときゅーさん(吸血鬼)が恋仲であれば成立します。女性同士・男性同士でもかまわん。
- 所要時間:約50分
- 人数:男性4 女性3
- ジャンル:ギャグ、コメディ、ファンタジー
登場人物
- ♂ ミイラ(みっくん)
渋谷モンスター連合のリーダー。怠惰。門番Bを兼ねる - ♀ 死神(しぃ子)
社畜。嫉妬。 - ♂ 狼男(がぶくん)
ツッコミ。暴食。 - ♀ 魔女(まーちん)
ネイリスト。傲慢。 - ♂ 吸血鬼(きゅーさん)
経営者。憤怒。 - ♂ フランケン(フラさん)
働くお父さん。強欲。門番Aを兼ねる - ♀ 黒猫(ねこ)
ねこ。色欲。
本編
■グループLINE
※【⠀】はチャット、「」は発話。声劇でやる場合、(しゅぽ)は言ってください。
ミイラ「(打ち込んでいる)あのー、えっとー、もしかしてみんな忘れてるかもしんないけど、今年のハロウィンどうするぅ?……送信」
吸血鬼【(しゅぽ)やるなり】
ミイラ「(打ち込んでいる)だよねー!! やるよねー! よかったー!」
ミイラ「あ、お湯湧いた」
狼男【(しゅぽ)もう25日だが。なんも準備してないが?】
魔女【(しゅぽ)うち31予定入れちゃったよ? 】
吸血鬼【(しゅぽ)えっ】
魔女【(しゅぽ)え、もしかして忘れてる? きゅーちゃんが誘ってくれたのに】
吸血鬼【(しゅぽ)えっごめん31にしたっけ?】
魔女【(しゅぽ)仕事そこしか休めないって】
吸血鬼【(しゅぽ)えっあっごめんずらせる? 】
魔女【(しゅぽ)うちとハロウィンどっちが大事なの?】
狼男【(しゅぽ)つまみだすぞ。個チャでやれ】
黒猫【(しゅぽ)いまきたさんぎょう】
死神【(しゅぽ)きゅーさんとまーちんの家庭不和】
黒猫【(しゅぽ)1行ですんどる】
狼男【(しゅぽ)おったんか、しぃ子】
死神【(しゅぽ)みてたよ・・・最初っから・・・フフ】
黒猫【(しゅぽ)フラさん見てんのかな?既読6しかついてなくない?】
死神【(しゅぽ)お子さんと寝落ちパターン】
狼男【(しゅぽ)ありうる】
ミイラ「うぉっ、話めっちゃ進んでんじゃん!」
ミイラ「んん……? つまり? まーちんときゅーさんは不参加……?」
ミイラ「(打ち込んでいる) ごめん、ラーメン作ってた。まーちんときゅーさん以外は参加可能……? 】
狼男【(しゅぽ)俺途中参加かも。半休もぎとるけど】
ミイラ「(打ち込んでいる)がぶさんりょ」
黒猫【(しゅぽ)私は朝から行くよ!!!??? 暇人だから!!!】
死神【(しゅぽ)みんな居るなら通話したほうが早くない?】
ミイラ「(打ち込んでいる)たしかに」
狼男【(しゅぽ)じゃあ酒持ってくる】
死神【(しゅぽ)なんで?】
■通話
ミイラ「みんな1年おつかれー!」
黒猫「おつおつー」
ミイラ「今年もハロウィンがやってきますよー!」
フランケン「ごめん~寝かしつけてたら一緒に寝ちゃって……もろもろ今見ました」
死神「フラさんおはー」
狼男「おはー」
フランケン「おはー」
黒猫「まーちんときゅーさんは?」
死神「さぁ。日程調整してるんじゃない?」
黒猫「なる。きゅーさんハロウィン忘れてたの? ウケる」
ミイラ「まあー、忙しそうだもんねー」
狼男「そういうみっくんも忙しそうだけどちゃんと飯食ってる?」
ミイラ「ん? 食ってるよ! もやし」
狼男「肉食え肉」
ミイラ「いやちょっと肉はちょっと……」
フランケン「バランスよく食べた方がいいよ? ただでさえほら、骨と皮なんだから」
ミイラ「骨川スネ夫です。悪いなのび太、このロケット、1人用なんだ」
死神「クオリティ……(高い/低いのニュアンスはまかせる)」
黒猫「なにーみっくんまた金ないの」
ミイラ「いやちょっと」
死神「いやちょっとなに」
ミイラ「絹の、包帯を」
黒猫「絹の包帯!? そんなんあんの!?」
ミイラ「いやこれがさー、すごい肌に馴染むんだわ」
死神「さすが動物性タンパク質」
狼男「お前ソレ昨日のずんだもん動画でみたやつ」
死神「てへぺろ」
ミイラ「快適すぎて全身分買っちゃった」
黒猫「そりゃ金なくなるわ」
ミイラ「絹なめてた」
魔女「おまたせー」
狼男「おお、どうなったん」
魔女「三ツ星ホテルでクリスマスディナーデートに振り替えてあげた」
吸血鬼「ンンッ」
死神「きゅーさんふとっぱらー!」
魔女「そのあとエルメスで買い物」
黒猫「きゅーさんふとっぱらー」
吸血鬼「おかねならあります」
フランケン「それで、今年のハロウィンどうするか、だっけ?」
ミイラ「あ、そうそう。ごめんねー遅くなっちゃって。まずー、誰が何時から来れそう?」
黒猫「ハイ、朝から」
ミイラ「ハイ、ねこたん朝からね。朝からやんないけどね」
黒猫「朝からやろうやぁ」
ミイラ「起きれないから。午前中とか」
黒猫「徹夜しな」
フランケン「イベント前って楽しみで寝れないよね」
狼男「小学生か。俺は、そうだな、早くて16時かな。移動と準備もあるし」
死神「31日ってもしかして満月?」
狼男「いや29日なんだ。惜しかったな」
死神「じゃ今年も変身セット用意しとく」
狼男「ああ、たのむ」
フランケン「俺は仕事終わってから行くかなあ。19時とか」
ミイラ「フラさんあんまり準備いらないからね~。間に合うっしょー」
フランケン「去年ストックした被検体 だいぶ潰しちゃったからね。いっぱい補充しないと!」
黒猫「手伝う? 生け捕りがよき?」
フランケン「ん? 死体でもいいよ。どうせすり潰すから」
魔女「うちときゅーちゃんは行こうと思えば朝から行けるけど、要る?」
ミイラ「ん~朝からやるとねえ……」
吸血鬼「どうしたのであるか? みっくん」
ミイラ「疲れちゃうじゃん?」
間
フランケン「たしかに~」
死神「我々ももう若くないことだし」
ミイラ「いやだってさー去年さー、フラさんに結界張ってもらったじゃん? おかげで意気込んだわりにラクショーだったわけじゃん? なら今年は夜からでもいんでない?」
狼男「まー、それはそう」
黒猫「えー! じゃあ、じゃあ~まーちん一緒に普通のハロウィン楽しもうよ~昼の間に~!」
魔女「それはそれで楽しそうだよね」
ミイラ「じゃ、朝から組はそっちで企画しといて…。俺はがぶさんに合わせて16時くらいにつくように、がんばるね」
死神「私も16時に着くように行くね。みっくんたぶん時間通りこないから」
ミイラ「行く行く、ちゃんと行くってぇ」
狼男「そうしてくれ。一人は、寂しくなっちゃうだろ」
死神「草」
ミイラ「んじゃ朝組は夕方に16時組と合流で。場所は?」
フランケン「やっぱハチ公様?」
魔女「ハチ公様やめといたほうがいいよ。緑電車は?」
黒猫「変わんないでしょ。むしろ西口の方に集まったほうがいいんじゃん?」
死神「スクランブルスクエアは?」
狼男「どこでもいいけど俺がわかるとこにして」
吸血鬼「中央改札出てヒカリエはどうであるか?」
狼男「ヒカリエならわかる」
死神「じゃそこにしよう」
魔女「おっけ~」
ミイラ「場所決まったね~。フラさんは電話するね~。着く時間分かったら教えて」
フランケン「了解~」
ミイラ「では、今年の役割分担について、です」
魔女「去年さー、フラさんの結界のお陰で、ヤバいのは駅周辺だけだったじゃん?宇田川町(うだがわまち)捨ててスクランブル交差点とセンター街の近くで集中して狩ったほうがいいんじゃない?」
吸血鬼「そうであるなー。今年は『渋谷はハロウィーンイベントの会場ではありません』って看板が出ているくらいであるし」
魔女「あんな看板出したって集まってくるよ。パッパラおバカどもは」
吸血鬼「おくちがわるいであるなあ」
魔女「あらーごめんなさぁい」
フランケン「こう数が多いと、見分けつかないんだよなあ」
狼男「全部美味そうに見える」
フランケン「うん。全部理想の被検体に見える」
黒猫「ねーもはや渋谷やめない? 新宿にしない?」
ミイラ「新宿はほら、サキュバスたちの縄張りだから……」
黒猫「クゥ~歌舞伎町四天王……」
死神「ここ数年でハロウィン期間は渋谷に人が集中するようになって、悪意も悪霊も溢れてる。毎年こんなに食べてたら太っちゃうのに」
狼男「そうかあ? 俺は食い足りんかったが」
死神「悪食オオカミくんは食い足りないってラノベありそう」
狼男「ハーレムものっぽいからやだ」
黒猫「んじゃーはらぺこがぶちんはマルキュー前よろ」
狼男「いいのか?」
黒猫「存分に暴れたまえ」
狼男「おうじゃあアバレンジャーする」
死神「ガオレンジャーじゃないんだ」
ミイラ「他にマルキュー前やりたい人いる?」
魔女「がぶちゃんやるならそれでいいよ、うち量より質だから。ね?」
吸血鬼「であるなぁ。良質な血が欲しいところである」
ミイラ「良質な血と魔力の集まるところかー」
フランケン「宮益坂(みやますざか)がいいんじゃない? オフィス多いでしょあの辺。パリピがどこまで広がるかわかんないけど」
魔女「そうしようかな。移動も少なくていいし」
吸血鬼「うけたまわったである」
黒猫「じゃあ私は道玄坂(どうげんざか)いこっかな~」
魔女「悪趣味ー」
黒猫「アングラな空気がいいんじゃん~! いかがわしい店から漂ってくるおいしそうな性への欲求……」
死神「サキュバスもびっくり」
黒猫「ただしエアプ」
死神「かわいそうに」
黒猫「キャバクラとか一度は行ってみたい。金さえあれば」
吸血鬼「あのへんは連れ込まれる子も多いゆえ要注意であるぞ」
黒猫「若い子食おうなんてクソは犬の餌にしちゃる」
死神「じゃ、駅前は私とみっくんでいいかな? みっくん暴走したら止めなきゃいけないし」
ミイラ「目の前においしそうな人肉があって理性保てるほうがおかしいんだよ……」
狼男「なんでミイラなのにゾンビの特質継いじゃったのかなぁこの人」
死神「フラさんどうする?」
フランケン「ん~。がぶくんに加勢しようかなあ。一人で大丈夫そうだったらやばそうなとこにいくよ」
死神「おっけ~」
ミイラ「じゃあ場所はそんなかんじで。それでは毎年恒例のーハロウィンを楽しむ五か条~」
魔女「そのいち~! 他の地域へ迷惑をかけなーい!」
ミイラ「はいそうねー、自分の地域のことは自分たちで解決しましょうねー」
死神「そのにー! 人間をたべなーい!」
ミイラ「これ一番気を付けてねー、特にがぶさんときゅーさん」
狼男「えぇ? 俺は赤いフードの子しか食わんよ」
ミイラ「アウトーー!」
吸血鬼「善処するである。であるが……おいしそうな太ももがあったら、ちょっと味見くらい許されたい」
魔女「ん?」
吸血鬼「すまないである」
黒猫「そのさーん! 正体がばれないようにする~!」
ミイラ「これねー、池袋のあのー、なんだっけ? 天狗とか河童とか結構身バレしてて昼の仕事辞めさせられてるからほんとこれも気を付けてね~」
フランケン「西洋のイベントに妖怪混じってたらバレるわなあ」
死神「上野エリアの妖怪たちはダースベーダーとトルーパーの仮装したってよ」
フランケン「いいなあ、俺もダースベーダーやりたい」
死神「その頭ねじ込むつもりなのメットに」
フランケン「スパイダーマンでもいいな」
死神「聞いてない!」
魔女「せっかく指名No.1ネイリストになれたのに無職はもうこりごり」
吸血鬼「養うお金なら、あります……」
魔女「私は仕事したいの」
吸血鬼「その、スカートの、けしからんスリットを他のニンゲンにみせびらかしにいかなくったっていいじゃないッ」
魔女「普段はかっちりオフィスカジュアル着てるってば」
フランケン「そのよーん! 悪霊はぶちころし、悪意はたべつくすことー!」
ミイラ「ぶちころ、あ、うん。まあ、そうなんだけどね。倒す、とか、消滅させるとかさ」
フランケン「ぶっころーす!」
ミイラ「小学生か」
狼男「そのごー。お菓子を忘れないことー」
ミイラ「そうそう、生霊(いきりょう)堕ちしそうなニンゲンが居たらお菓子の護符を渡してね~」
ミイラ「はいじゃー渋谷モンスター連合諸君〜当日よろしくー」
全員「はーい」
■ハロウィン当日・渋谷、16時
黒猫「いやー楽しかったねーハロウィン」
魔女「スイーツ巡りって案はよかったね。カロリー気になるけど」
黒猫「これから消費しようや」
吸血鬼「普段我慢してるからね、まーちん」
黒猫「え? そのプロポーションは魔法使わなくて、それなの?」
魔女「あたりまえでしょ。魔法つかったらズルじゃないの」
吸血鬼「痩せる魔法、自分で開発したのに使ってないのであるよ、えらいねぇ」
魔女「ふふん。きゅーちゃんに美味しい血を提供するために、健康と美しさの維持は欠かせないってわけ」
吸血鬼「きゃー!イケメン」
魔女「そういうのもっとちょうだいもっと」
黒猫「でも今日悪霊の血吸うんでしょ?」
吸血鬼「食い溜めってやつであるなあ。まーちんの血はほら、いっぱい貰うと貧血になっちゃうから」
黒猫「そういうシステム」
狼男「よー」
吸血鬼「がぶさん、迷わず来られたであるか?」
狼男「いや、10分くらい彷徨った。前来た時と駅ナカ全然違ってて……ねこ、後ろ」
死神「生けるダンジョン、渋谷駅」
黒猫「うぉ、しぃ子ちゃんいたの」
死神「いたよ、最初っから。フフ」
魔女「声かけてよ〜」
死神「誰が最初に気づくかなって」
狼男「俺は気づいた」
死神「ありがと」
黒猫「ごめんてーいや影薄いとか思ってないてー」
魔女「ちょっと話に集中しちゃっただけなのー」
死神「楽しそうだったね」
魔女「今度はしぃ子ちゃんも一緒に行こうねぇ」
死神「休み取れたらね」
間
狼男「暗くなってきたしそろそろ変身しとく?」
死神「そだね。みっくんはやっぱり来ないかー」
黒猫「ねえーみっくん待つにしても移動しない? ここずっと蚊の音してて不愉快」
狼男「ファッキン若者を遠ざけるための施策さ。モスキート音」
吸血鬼「? なにか聞こえる?」
魔女「うちは聞こえる」
吸血鬼「……ワシももう歳か」
魔女「歳を重ねてもあなたは素敵」
吸血鬼「……まーちん!」
狼男「つまみだせ」
死神「じゃあ先に準備しよっか。門開くね。いでよーデスサイズっていうとちょっとカッコイイでっかい鎌〜。シャキーン」
魔女「効果音自分で言うスタイル」
死神「開けー冥府の門〜ざしゅー」
門番A(フランケン兼ね)「死神様! もう仕事でございますか!」
門番B(ミイラ兼ね)「我々、17時ごろより霊魂処理開始と聞いております!」
死神「ねえ門番諸君。みんなが着替えるから場所かしてー」
門番A「はっ! ・・・は? いやいやいやいくら死神様といえど人間を入れる訳には!」
門番B「というか人間に門を見せて良いのですか!?」
死神「あ、君たち新人かあ。毎年恒例なんだよねーここで着替えるの。この人たち、あ、人たちって言っちゃったけど人間じゃないから。ってことでケルちゃん犬小屋に入れといてくれる?」
門番A「ケルちゃん」
門番B「まさか」
死神「ケルベロスのことだけど」
門番AB「むりむりむりむりむり」
死神「草」
門番B「どうやって一度に3つの頭を注意しろってんですか!」
門番A「我々に餌になれというんですか!?」
死神「もーしょうがないなーはい。」
門番A「こ、これは・・・!」
門番B「これは、なん、ですか」
死神「てゅーる」
門番A「てゅーる」
死神「犬用」
門番B「あるんだー犬用」
間
門番B「じゃなくて、てゅーるで釣れるんすかケルベロスって」
門番A「聞いたことねえですよそんなの」
死神「先週くらいからあの子、ハマってんだよねてゅーる。開けて目の前で振ったら寄ってくるから。小屋まで誘導して柵閉めてね。じゃよろしく」
門番A「ええっ」
門番B「しんだな、おれたち」
門番A「案ずるな、もう死んでる」
黒猫「てゅーる……!」
死神「犬用だよ、ねこたんはこっち」
黒猫「てゅーーーーーーーーる!!(以後裏でにゃんにゃん言ってる)」
魔女「ガチ猫になっちゃった」
吸血鬼「ねこ吸いたいなあ」
魔女「ん?」
吸血鬼「すまないである」
狼男「じゃ頼む」
死神「はーいえっとーコンセントどこだったかなー」
狼男「ちょっと着替えるから後ろ向いててくれ」
魔女「あーはいはい、去年破ってたもんね」
吸血鬼「マンガみたいであったな。ムチイ! ビリィッって」
魔女「うちは正直しっぽがどうやってパンツを突き破ってるのかきになる」
吸血鬼「それは考えちゃだめ」
狼男「(着替えてる)だから3L(スリーエル)サイズの服買ってきたんだよ。店員に凄い目で見られたけど」
死神「あーあったあった。すいっちおーん」
吸血鬼「おお! きれいなルームライトであるなー」
魔女「ねえ、去年より書き込み細かくない?」
死神「あ、分かる? このクレーター、月面地図と対応してるんだよね。これがアリスタルコス、でこっちが雨の海、下の影濃いところが南極エイトケン盆地っていってーー」
魔女「あんたはどこに行こうとしてるの」
死神「だって去年の出来に納得できなくて」
狼男「よし、いいぞ」
死神「おっと。まーちん手伝ってー。わたし月持ってるからー」
魔女「はいはい。”漆黒の影、零れ流れて星包み、夜のヴェールは緩やかに波打つ”」
死神「”いでよー! ひかりむしー! 配置につけー!” はーいがぶさんこっち見てー夜空に浮かぶ満月だよー」
狼男「ううう、ううううう……”それは飢えだ。俺を掻き立てる忌まわしき記憶、渇望、満たすべき欲求、喰らいつくすための牙! ” 変身ッッ!」
吸血鬼「うーん、美しい夜であるなー」
黒猫「”月は狂気”」
吸血鬼「ん?」
黒猫「”我はサタンのしもべ、大魔女の使い。” ムーン・クラッシュ!」
狼男「うおおおおおお! わおーーーん!……ふう、モード・ウェアウルフ」
黒猫「ふう。愛と色欲の戦士、プリティ・キティさ。」
ミイラ「アウトぉぉおおおおおお!!」
死神「あれみっくん、いたの?」
ミイラ「遅れてごめんね!? ごめんごめんごめんだけど!色々アウトだって!」
狼男「えー」
黒猫「えー」
ミイラ「そもそもキミたち詠唱いらないでしょうが! 去年普通に変身してたでしょうが」
狼男「むしろ普通に変身しちゃったから1年考えたのに」
黒猫「がぶくんが変身セリフやるっていうから」
ミイラ「そんなん、そんなん俺もやりたかった……!」
死神「やれば?」
ミイラ「え?」
死神「やればいいじゃん」
ミイラ「……え?」
死神「やれば、いいじゃん」
魔女「みててあげるからほら」
吸血鬼「おっ、みっくんもやるのか(わくわく」
ミイラ「いや、ちょ、即興とか、無理かなーて」
魔女「”照らせ、主(しゅ)はそこにおわす”」
ミイラ「スポットライトぉ!?」
吸血鬼「ほう。ではワシも。”眷属(けんぞく)よ。奏で、歌!”」
ミイラ「BGMゥ!?」
間
ミイラ「……」
ミイラ「”ルーンリフレクション・ライトアップ!”」
吸血鬼「おお!包帯が!」
魔女「それっぽく巻きついて……!」
ミイラ「”王家の谷より這い寄る混沌、砂漠の灼熱・背負いて顕現、アンデット界の一番星!! ミーラー・ラムセス!!”」
間
ミイラ「ファラオに変わって呪うわよ!」
吸血鬼「おおお!! かっこいい〜!」
狼男「そっちかー」
黒猫「そっちかー」
魔女「どうすんのこの空気」
死神「面白そうだからちょっと見てよう」
ミイラ「……もおおおおっ! 殺してええええ!(泣)」
フランケン「シュッ。トスッ……」
魔女「何っ!? 赤い、薔薇!?」
フランケン「私はフランケン仮面。泣いていても何も解決しないぞ、ミーラー・ラメセス。」
ミイラ「フランケン仮面様ッ!!」
フランケン「私は笑顔の君が好きだよ。さあ!カーニバルの主役はきみだ! 立ち上がれ! ミーラー・ラメス!」
ミイラ「きゃー! 表記揺れがすごい!」
死神「19時合流じゃなかったの? フラさん」
フランケン「いやー、早めにあがれてね。良かったよ」
ミイラ「えっ」
狼男「カッコよかったよ、フランケン仮面様」
フランケン「最近娘がハマっててさ」
魔女「プリキュアじゃなくてセラムン?いい教育してんねぇ」
フランケン「あとクリィミーマミ」
吸血鬼「ほんとに令和の子?」
フランケン「転生者かもしれない」
ミイラ「無視された……しくしく」
黒猫「泣いていても、プッ、何も解決しな、プッ、
しないぞ」
ミイラ「”捕縛・絹糸(ほばく・きぬいと)”」
黒猫「んに゛ゃ、うぉ、すべすべ」
ミイラ「おだまり」
黒猫「もごにゃ」
ミイラ「みんな準備できたかんじ? インカムおっけー?」
フランケン「うん! 音声良好〜! わくわくしてきたー」
魔女「音声良好。うちらは朝から仮装のふりしてたからね」
吸血鬼「うむ! 聞こえるである。いいぐあいに腹もこなせた」
狼男「がおがお」
死神「いつでもー」
黒猫「にゃご」
ミイラ「それじゃーみんな・・・・・・いこうか」
■マルキュー前
狼男「ふははははっ!! 砕けろ雑魚ども!」
フランケン「まったくがぶさんは元気だねっと。電撃装置すいっちおーん」
狼男「食う! 食う! 食うッ!」
フランケン「設定完了。……さあ楽しい実験の時間だ」
狼男「骨のねえヤツらだなあ! あぁ!?」
フランケン「おーい射線に立たないでねー」
狼男「あ?」
フランケン「100万ボルト。さんだぁ!」
狼男「うおっ!?」
フランケン「うーんいいねえ! やっぱり電気だよ電気!!」
狼男「あっぶね、あっぶね! フラさん!? 俺ごと焼こうとしたな!?」
フランケン「やだなーちゃんと注意したじゃないかー。射線に立つなって」
狼男「電撃に射線もクソもあるかっ!」
ミイラ『ちょっと! いまのでっかい音なに!? 生きてる? 』
フランケン「俺の電撃装置ー」
ミイラ『Oh……さすがっすフラさん』
フランケン『試したくて仕方なかったんだよね。100万ボルト、0.0005アンペア。』
ミイラ『……無事ならおっけーだけどニンゲンころさないでね!?』
フランケン「だいじょぶだいじょぶー。がぶさんが牧羊犬のごとく悪霊だけ一纏めにしてくれてるからー」
狼男「俺オオカミなんだが!?」
フランケン「ほらー早く回収してくれないと、起きるよー」
狼男「え!? えぇ!? これ死んでないの!?」
フランケン「電圧高いから派手に見えるんだけど、実は電流クソザコなんだよねこれ。インドゾウが気絶する程度」
狼男「電気ネズミ先輩かよ!!」
フランケン「1アンペアでも飛ばしてみ? まずがぶくんが巻き添えで死ぬよ。安全第一。ヨシ!」
狼男「良くねぇ! っく、起きやがった、おおら!(殴る)」
フランケン「(避けながら)ねえ! そうだ! キックしないのっ? ほっ!」
狼男「(パンチしながら)さすがにっ! だめだろっ! あっ!」
フランケン「どうした!!」
狼男「おもいついちゃった」
フランケン「やってみ?」
狼男「……ライカンキーーーック」
フランケン「……」
狼男「ふーっ」
フランケン「ライカンキック」
狼男「頑張れば聞こえなくもなくなくない?」
フランケン「無理ある」
狼男「ちっくしょーーーーー!!」
フランケン「あっがぶくんあんまり被検体損傷させないで! 持って帰るんだから!」
狼男「(悪霊を喰らっている)」
フランケン「ほんっと暴食ー」
狼男「(遠吠え)」
■宮益坂
魔女「どんぱちやってんねぇ〜」
吸血鬼「こちらもはじめようか」
魔女「ほいじゃまず “魅了は言の葉、欺く幻影、おいしい魂ほしい人、この指とーまれ”」
吸血鬼「おるわおるわ、わらわらと下級霊が」
魔女「とりまニンゲン巻き込みたくないし、上空までひっぱっちゃおっかー。悪霊のみなさぁ〜ん! おいしい魂ですよ〜こっちですよ〜」
吸血鬼「……」
魔女「何?」
吸血鬼「ムゥ」
魔女「なによー毎年のことじゃんかー。ひとまとめに出来て便利でしょー囮作戦」
吸血鬼「便利ではあるが……」
魔女「うちら揃ってたらちょちょいのちょいだしねー」
吸血鬼「正直、まーちんに有象無象が群がる様は」
吸血鬼「反吐が出る」
魔女「オゥ」
吸血鬼「”眷属よ。女の霊は喰ってよし。男の霊は……四肢をもぎってワシの前に連れてこい”」
魔女「ちょっと! うちの分残しといてよね」
吸血鬼「ムゥ。 “眷属ーごめーん、霊力高めの女の霊見繕ってまーちんにあげてーよろしくー”」
魔女「女限定?」
吸血鬼「これでも百歩譲ったのだ!」
魔女「もーおこんないでよー!ありがとー」
吸血鬼「(気づき)まーちん!後ろだ!」
魔女「えっ、ひゃっ、うええなになにこいつでか!」
吸血鬼「上級霊であるな」
魔女「ちょっと、離してよ! ばか、どこ触ってんの!」
魔女「うっ」
吸血鬼「”血の鉤爪”」
魔女「ひっ……えっ、うわ」
吸血鬼「(抱きとめた)ぶじであるか、まーちん」
魔女「きゅん」
吸血鬼「少し雑魚を任せる。ワシを怒らせたくなければ油断するな」
魔女「ご、ごめん」
吸血鬼「まーちんに怒っているのでは無い。自分の、不甲斐なさにだ」
魔女「きゅーちゃん……」
吸血鬼「ワシはあの腐れ上級霊をぶちころす」
吸血鬼「”眷属よ。集いて我が剣(つるぎ)となれ。剣戟(けんげき)の音を響かせよ。奏で! 交響詩・死の舞踏!”」
魔女「もう……おくちがわるくってよ」
■スクランブル交差点
ミイラ「アァ〜人多いよぉ〜」
死神「がんばれみっくーん」
ミイラ「えぇ……? もう、えぇ……? そこにあるじゃん看板が。『渋谷はハロウィンイベント会場ではありません』って。見えてないの? 日本語読めないの?」
死神「観光客なんじゃない?」
ミイラ「英語も併記してあるのに?」
死神「中国人なんじゃない?」
ミイラ「ならしかたな、くない!」
死神「あれだね、今年も仮装、てかコスプレ?の精度高くてニンゲンと悪霊の見分けつかないね」
ミイラ「めんどくせぇ、ああ、めんどうくせえなあ、ニンゲンも悪霊も悪意も、ぜぇんぶ一纏めにして食っちまえば楽だよなあ……」
ミイラ「”捕縛・蜘蛛糸(ほばく・くもいと)”」
ミイラ「ああ~うまそうな人肉が、山になってんだよなあ。食うか、食ってもいいよなあご褒美だよなああああ!」
死神「あーあ。やたらめったら纏めるから、ほら、DJポリスが困ってるよ。広がってくださいって」
ミイラ「……ったくよぉ、だれだよニンゲン巻き込むななんて条例つくったやつ……めんどくせえなあ……」
死神「みっくんだよ」
ミイラ「そうでした。”捕縛・解(かい)”。」
死神「悪霊うんぬんより群集事故で人が死にそうだね」
ミイラ「……あーーーーもーーーー!」
ミイラ「”糸繰り(いとくり)・迷路!”」
死神「おぉー」
ミイラ「”意図繰り(いとくり)! 思念!”」
ミイラ「これでいい!? 立ち止まらなければいんでしょ!?」
死神「おみごと」
死神「さてこれで、人間の流れに沿わない奴が、悪霊ってことだねぇ~」
死神「”変形、デスサイズ・大首落とし”」
死神「さあ〜悪霊様ご一行、たのしいたのしい黄泉の国ツアーへご招待〜」
ミイラ「エグゥ」
死神「”死神式 鎌術(れんじゅつ)・魂突き(たまつき)・大車輪!”」
ミイラ「エッグゥ!! ええ!? そんな大技みたいの去年やってた!?」
死神「へへー!みんな技もっててかっこよくてぇ!! 一年練習したの!!」
ミイラ「ええ、超楽じゃん、じゃ、じゃあ俺縛りまくるからしぃ子に狩りまくってもろて」
死神「はたらけ?」
ミイラ「はぃ」
■道玄坂
黒猫「にゃははははーーーー!!」
黒猫「”猫かぶり!”」
黒猫「”プッシーキャット!”」
黒猫「”猫草ァ!”」
黒猫「”キャットファイト!”」
黒猫「うめえうめえうめえなあ! 下品でみだらな妄想だ! もっとおくれよぉ! オトコもオンナもどっちでもなくても! ココロとカラダひんむいて、エゴにまみれたそのナカミ、あけすけに見せておくれよ! にゃははははははは」
死神『ねこちゃーんそっち1人で大丈夫?』
黒猫「うふ、うふ、うふふふふ、最っ高……」
死神『……大丈夫? 』
黒猫「んんっ、あーね、大丈夫大丈夫。ちょっと峠越えてただけだから」
死神『峠?』
黒猫「絶頂?」
死神『……やっぱりだれかつけるべきだった』
黒猫「見られてるほうがやりずれーわ」
死神『キツかったら言うんだよ』
黒猫「へーい」
黒猫「お?なんだこれ。オーブ?」
■通話
魔女『応答せよ! 応答せよ! ねえちょっと数多すぎない!?』
狼男『こっちももう腹いっぱいだ』
ミイラ『消しても消しても湧いてくるね……』
魔女『さすがにやばいって! 渋谷が落ちたら次は新宿だよ!?』
ミイラ『……』
死神『悪意に飲み込まれたら、人は狂い、争い始める。悪霊はからっぽのカラダをもとめ、人をそそのかす。怒りは、快楽だからね』
吸血鬼『戦後のあの惨状は、もう見たくないな』
間
フランケン『ていうか外から集まってきてる感じしない?』
魔女『たしかに。 なんで?』
フランケン『結界は機能してないの?』
狼男『交差点組、ハチ公様の様子は?』
死神『えっと、え!?』
フランケン『どうした!?』
死神『なんかー白い幕で覆われててー、封印、されてる』
ミイラ・魔女・吸血鬼・狼男・フランケン『それだーーー!』
ミイラ『えっえっどうする!?』
魔女『これだからニンゲンはバカなんだよ!』
吸血鬼『ハチ公様の結界で他地域からの流入を防いでおったのに』
フランケン『俺そっち行ったほうがいい!?』
狼男『封印とけないのか!?』
死神『勝手に剥いだら明日ニュースになっちゃうよぉ!』
ミイラ『ちょっと中見てくる!』
死神『待ってみっくん危ない!』
吸血鬼『みっくん!』
魔女『みっくん!?』
フランケン『みっくーん!』
狼男『みっくん!!!!!』
間
狼男『え? みっくん死んだ?』
フランケン『惜しいやつをなくした……』
吸血鬼『みっくんは犠牲になったのだ……犠牲の、犠牲にな……』
魔女『そんなっ、ニンゲンごときがそんな強い封印できるわけない!』
死神『うそ、うそだよ、みっくん……!』
ミイラ『勝手に殺すなァーーッ』
死神『みっくん』
狼男『おお、みっくん』
フランケン『死んでしまうとは何事だ』
ミイラ『死んでねぇっつの! いや、もう死んでるっつの!!』
吸血鬼『そういやミイラはアンデットだったな』
ミイラ『つかしぃ子は見えてるだろ!』
死神『てへぺろ』
魔女『茶番はいいから、結界はどうなってんの』
ミイラ『ハチ公様に反転物質がくっついてる』
死神『はんてんぶっしつぅ?』
吸血鬼『冬に着るあったかいヤツ?』
狼男『それ半纏』
フランケン『おいしくて白くてふわふわの?』
狼男『それはんぺん』
魔女『ライブ行った記念に取っとく』
狼男『それ半券』
ミイラ『聞けよ! だぁーもう! ハチ公様の結界は! 渋谷エリア外に向けてなんか渋谷近寄りたくないなーって悪霊に思わせて遠ざけるシステムなの! だよね!?』
フランケン『そうそう』
ミイラ『ありがと!! それを逆の作用にされてんの!』
魔女『つまり、渋谷行こうぜイェア! って気分にさせてるってこと!?』
ミイラ『そゆこと!』
狼男『ファッキンパーリーピーポーじゃねえか』
吸血鬼『それはどうしたらとれるのだ?』
ミイラ『これはあ、この封印式はあ、えっとー……楔(くさび)を抜けばいいんだとおもうけど』
死神『抜けないの?』
ミイラ『触れない、すり抜ける』
フランケン『触れない封印の楔……?』
黒猫『おーいなんかさーマークシティんとこなんだけどー、変なオーブつきの杭みたいのが地面に刺さっててさー、これなんだか分かる? LINEに写メおくっといた』
魔女『ねこたん今それどころじゃないんだよ』
死神『ごめんねあとで見るから!』
ミイラ『これだ!』
黒猫『キィーン』
ミイラ『これだよ楔! ねこたんこれ壊して!』
黒猫『えっ、あ、はぁい。……”ワイルドキャット!” 』
ミイラ『ハチ公様の首元の楔も割れた……楔はあと6つ、渋谷のどこかにあるはず…!』
魔女『この数の悪霊を捌きながら、こんなちっこいもの探すの!?』
黒猫『音鳴ってるよ、リィーーンて。不愉快だったから出どころ追っかけたらあったんだけど』
死神『みんななんか聞こえる?』
フランケン『なにも、ってか周りがうるさすぎて』
魔女『うちも聞こえない』
黒猫『ええ!?』
狼男『あ。』
ミイラ『かぶくんきこえる!?』
狼男『かろうじて……ちょっと行ってくる』
フランケン『うん、こっちは任せて』
黒猫『なんで他のみんなには聞こえないんだろ……?』
吸血鬼『うん? うん。そうなの? ねえ眷属も聞こえるって。まーちん、ちょっと行ってくるであるよ』
魔女『へ? ああ、いってらっしゃい』
吸血鬼『ワシがいない間、無理はするな』
魔女『きゅん』
ミイラ『あのぉ、聞こえてます』
狼男『つまみだせ!』
フランケン『音が聞こえたのはねこくんとがぶくん、それからきゅーさんの眷属、つまりコウモリ……猫の可聴域、約10万ヘルツ、犬の可聴域約5万ヘルツ、コウモリの可聴域約12万ヘルツ……つまりその音ってのはニンゲンの可聴域約2万ヘルツから犬の可聴域5万ヘルツのあいだの音なんだ!』
黒猫『にゃるほどね!?』
狼男『犬って言うなァ!』
死神『フラさん天才!』
フランケン『動物図鑑は暗記してるのでね』
ミイラ『何のために?』
フランケン『聞きたい?』
ミイラ『いや、いいっす』
狼男『はあ、マルキュー屋上、あったぞ、壊していいんだな?』
ミイラ『やっちゃって!』
狼男『”ライカンキーーーーック”』
間
魔女『ライ、何キックって言った今?』
ミイラ『ちょっと聞き取れなかったっすね』
フランケン『ライカンキック、ライカンキック、セーフセーフ』
死神『変身したもんねそうだよねキックしたいよねセーフセーフ』
狼男『壊れたぞ』
ミイラ『こっちも一本壊れた!』
吸血鬼『こちらヒカリエ。こっちのも壊すであるよ。”けんぞくぅ!悪即斬!” はいっせーの!』
ミイラ『よし、あと4本……!』
魔女『じゃあ聞こえる3人はその楔を探して!』
黒猫『りょうかいなり』
狼男『しゃあねえな』
吸血鬼『眷属いってらっしゃい』
黒猫『ずっこいぞきゅーさん!』
吸血鬼『ワシおじいちゃんだから聞こえないもん』
狼男『あぁ……モスキート音……』
黒猫『じゃ急いで探そ!』
狼男『おう』
フランケン『たのんだよ!』
■マルキュー前
フランケン「とは言ったものの……」
間
フランケン「俺は戦闘能力ないんだよなあ」
間
フランケン「仕事とはいえ、ニンゲンなんか守ったってなあ……」
間
フランケン「感電覚悟で、1アンペア、みなごろし作戦、いっとく?」
フランケン「いやーどうだろ、1回雷に打たれてるし、2度目も生き残れるかも」
フランケン「この数だもんなあ」
フランケン「ニンゲンも幾らか死ぬけど、まあ、渋谷全域落とされて、もっと死人が出るより、マシだよなあ」
フランケン「電撃装置、チャージ。100万ボルト、1アンペア」
フランケン「すいっち、お」
死神「だめだよ」
フランケン「しぃ子くん?」
死神「間に合ってよかった。加勢するから」
フランケン「みっくん1人にして良かったの?」
死神「だいじょぶだよ、あんなんでもうちらのリーダーだから。怠惰なだけでやるときゃやるよ」
フランケン「そっか。いいなあ強くて」
死神「フラさん、ねえ、家族がいるんだからさ」
フランケン「んぇ」
死神「自分が傷つくのを厭わないやり方はもうやめよう」
フランケン「あーバレた?」
死神「バレバレ。もー! 去年約束したじゃん!」
フランケン「へへへ」
死神「笑って誤魔化すんじゃありません」
フランケン「っ! あぶない!」
死神「”大車輪”」
フランケン「……いいなあ、その強さ。欲しいなあ」
死神「あげるあげる」
フランケン「……どうせ博士に作られた人工生命体さ。いつ死んだっていい。俺の結界が機能しなかったからこうなったんだ。償わせてほしい」
死神「私はフラさんが居なくなったら悲しいよ」
フランケン「そうかあ」
死神「償いより、一緒に乗り越えようっ、て思う。みんなも多分そう」
フランケン「そうかなあ」
死神「愛されてるね」
フランケン「愛、愛、愛ねぇ」
死神「まだわからない?」
フランケン「わからない」
死神「そ。じゃ分かるまで、冥府には入れてあげません」
フランケン「ひどいなあ」
フランケン「100万ボルト、0.0005アンペア」
フランケン「さんだぁ」
死神「ほい、狩ってくるね」
フランケン「強いなあ、しぃ子くんは」
■宮益坂
魔女「んじゃま久しぶりに本気だすかー」
吸血鬼「お、やるのか」
魔女「だって油断して負けたとかカッコ悪すぎ」
吸血鬼「ふむ。ではワシは下がっていよう」
魔女「ふー。”霧はゆらめく。深く深く入り込み、腹の底、心の臓、脳の中心へ。人へは快楽を、悪霊へは痛みを。小さきものよ、血の流れに乗り、駆け巡れ”」
魔女「”毒霧”」
吸血鬼「範囲魔法、おみごと」
魔女「はーっ、はーっ」
吸血鬼「鼻血」
魔女「さいあく」
吸血鬼「よくがんばった」
魔女「がんばったでしょ」
吸血鬼「呪文10フレーズに技名、完全詠唱じゃないか」
魔女「うちだってこれくらいできるもん」
吸血鬼「よーしよしよーし」
魔女「つかれた」
吸血鬼「丁寧ないい呪文だった」
魔女「うん」
■スクランブル交差点
ミイラ「”糸繰り・螺旋(らせん)!”」
ミイラ「あーー絹糸高いのにー!」
ミイラ「俺のせいだよーーー夜からでいいとか結界あるからラクショーとか!!」
ミイラ「”意図繰り・思念!”」
ミイラ「くっそ絹糸細くて人間の脳みそいじるのめんどいなぁ!」
ミイラ「めんどいめんどいって!めんどくさがったら余計めんどいことになった!これで負けたら全域会議でドヤされてもっともっとめんどいことになる!最悪だ、もー最悪だ!」
黒猫「”ねこばば!”」
ミイラ「うぉっ」
黒猫「やほー」
ミイラ「楔は!?」
黒猫「残り1本。がぶくんが探してくれるって。戦闘能力高いからほっておいてええじゃろ」
ミイラ「……」
黒猫「あんたのせいじゃないってー」
ミイラ「俺のせいじゃん」
黒猫「反転物質が出てくるなんて誰も思わん」
ミイラ「朝からやってたらこんなに溜まらなかったかも、あと結界のチェック先にしとけば気づけたのに、とか」
黒猫「タラレバニラレバ〜」
ミイラ「茶化すなよぉ」
黒猫「今乗り越える方が大事、反省はあと」
ミイラ「……」
黒猫「よく考えなって。誰が、誰に反転物質を提供したのか」
ミイラ「だれがって、反転物質は地下の国にしかないんだから……まさか」
黒猫「いまはやめとこ。ね」
ミイラ「最悪だ」
■タワレコ屋上
狼男「こんなところにあるなんて」
狼男「俺じゃなきゃ見逃してたぞ」
狼男「マルキュー、マークシティ、ヒカリエ、ストリーム、モディ、センター街……そしてここタワーレコード屋上。」
狼男「みごとに商業施設ばかりだな。意図がありそうだ」
狼男「とはいえこれでラスト。いくぞ」
狼男「ライカンキーーーーック!!」
■早朝
ミイラ「あ、おつかれさまでーす。どうもー。ありがとうございまーす。おつかれさまでーす」
死神「がぶさん、ビンとペットボトル分けて」
狼男「え、一緒じゃダメなの」
死神「ゴミ出ししたことないんか」
狼男「いっつも駅のゴミ箱に捨ててるから……」
黒猫「プラとビニールはいっしょ?」
フランケン「いっしょ。資源ごみ」
黒猫「おべんとばこ?」
フランケン「資源だけど、洗えないから可燃でいいよ」
黒猫「はーい」
魔女「この早朝ごみ拾いも毎年恒例だね」
吸血鬼「であるな」
ミイラ「ひどいよねぇ、この町に住んでない人が残した汚れを、この町に住んでる人がどうにかしなきゃいけない、ん、瓶割れとる」
吸血鬼「割れ物ここ」
ミイラ「ん」
魔女「悪意だわ。悪意。意識してないだけ」
ミイラ「遊びに来てる人は、楽しんでるんだもんね」
魔女「誰かの迷惑を顧みず楽しむって、いちばんタチの悪い悪意だよ。悪いことしてるって自覚がないんだもん」
狼男「7箇所の楔の位置、明らかに人間が集まる場所だった」
死神「それに反転物質」
黒猫「もっともっと大きな悪意を感じるよね」
ミイラ「だれかが、地上に混乱をもたらそうとしてる」
黒猫「地下の国と全面戦争なんていやだよ、私は」
ミイラ「俺だって嫌だよ、めんどくさい」
フランケン「いやだなあ、娘が安全に過ごせない」
魔女「他地域と、手を組むべきだと思う」
ミイラ「うーん」
吸血鬼「頼むぞ、リーダー」
ミイラ「なぁんで怠惰な俺をリーダーにしちゃったの君たち」
黒猫「怠惰で完璧主義な君だからだよ。ね」
死神「あと真面目。超真面目」
狼男「凝り性」
フランケン「ニンゲンが好きなところ」
魔女「八方美人」
ミイラ「それ褒めてなくない!?」
ミイラ「しょーがないなー。いっちょがんばりますか……」
狼男「打ち上げどうする?」
フランケン「飲も!飲も飲も!」
黒猫「のむ!のむのむ!」
吸血鬼「ねこちゃんは飲めないでしょ」
黒猫「のむ……」
死神「この時間で開いてるかなあ」
魔女「ゴミ臭くて無理、シャワー浴びたい」
死神「あ、冥府のシャワールームつかう? 凍るほど冷たいけど」
魔女「かんべんしてよぉ」
狼男「銭湯行こう銭湯」
黒猫「恵比寿まで行けば朝やってるスパある」
魔女「いこう、いこうスパ」
死神「えー暖かいお風呂かあ」
黒猫「水風呂あるよ、サウナの前に」
死神「水風呂いいね!」
フランケン「サウナ!」
吸血鬼「ととのっちゃう?」
フランケン「いいっすねぇ!」
死神「おーい、みっくん置いてくよー」
ミイラ「ちょ、まって、まってよー!」
おわり
2023.10.31.