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『ミスターパンプキンのかがり火』【ボイスドラマ用】

2018年執筆の過去作を再掲。

    

       『ミスターパンプキンのかがり火』

○登場人物

ジャック・ノーラン…主人公。巫女の祖母に育てられた少年。

周囲からは祖母とともに「魔女」とよばれ嫌われてきた。

ロザリア・エメット…ジャックの幼馴染の少女。

ジャックとミスターを嫌わない数少ない村人。

煮え切らないジャックを引っ張るタイプ。

ミスターパンプキン…かぼちゃのかぶりものを常にかぶっている男性。

ジャックの祖母マリアにかつて蘇生された元人間。

村を悪霊から守るという誓いを強制させられている。

バアル  …                        ミスターと因縁のある悪魔。

かつてミスターのせいで罰せられ、恨んでいる。

リカルド・クローディス…クローディス商会のトップ。金持ち。

村のハロウィン祭を観光のために利用しようとしている。

サーシャ…            村に住む少女。

村人1,2,3…   男性。

村人4,5 …    女性。

子供1,2…                  回想シーン、ラストシーンのみ。少年。

子供3…                          回想シーン、ラストシーンのみ。少女。

ジャックの母親…          回想シーン、1台詞のみ。村人と兼役。

本編

□アバンタイトル

ジャック(N)『「ハロウィーンの夜、ろうそくの炎を絶やしてはいけないよ」

                     それはこの村に伝わる言い伝え。

                    悪魔に魂喰われるぞ。

                    トリックオアトリート。お菓子をくれなきゃいたずらするぞ。

                      さあ、知恵比べをしよう。

                    目の前に浮かぶそれは、悪霊か、生霊か

                      朝まで、遊んでおくれ』

□ミスターの丸木小屋、室内

        木製の扉をノックする音。

            鍋かポットででお湯を沸かしてお茶の準備をしている。

ジャック            「ミスターパンプキン? いる?」

        木のドアを開ける音

ミスター            「やぁ、ジャック。どうぞ」

ジャック            「うん、こんにちは」

 

机の上にかごをおく。

ジャック    「今日はローストチキンがあるよ」

ミスター    「いいねぇ。肉はいい」

ジャック    「あとぶどうジュース!」

ミスター    「ワインじゃないのかい?」

ジャック    「僕飲めないもん」

ミスター    「君のおばあさんはよくウィスキーを持ってきてくれたのに」

ジャック    「成人するまで待ってよ」

ミスター    「しかたないな。待つのは得意だ」

    M ほのぼの系(     )イン、BGになる

ジャック    「でさあ、聞いてよ」

ミスター    「今度はどうしたんだい(チキンを食べながら)」

ジャック    「……いつも言ってるけど

 食べてる時くらいそのかぼちゃ頭外したら?」

ミスター    「(飲み込んで)いつも言ってるけど外せないんだよ。呪いで」

ジャック    「はぁ、まあいいや。でね」

ミスター    「うん」

ジャック    「明日のハロウィン祭なんだけど、あのクローディス商会のやつら……

                 今年は大蝋燭をやめるっていうんだ」

ミスター    「ふうん。経費削減かな?」

ジャック    「それもあるけど、蝋燭より花火のほうが客引きがいいからって」

ミスター    「それで、君はどうするんだい」

ジャック    「……べつに、なにも」

ミスター    「いいのかいそれで。君は知っているはずだろう、大蝋燭の意味を」

ジャック    「……みんな、悪魔なんて迷信だって言ってる。

連れ去りだって、言い伝えられてきたけど、起こったことないって」

ミスター    「それは毎年きちんと結界を張っているからさ」

ジャック    「村のみんなにも花火のほうが歓迎されてるんだ。

僕一人がなにか言ったって……」

ミスター    「おばあさんは一人でも声を上げ続けていたよ」

ジャック    「……マリアおばあちゃんと僕は違うんだよ。

       もう、みんなといざこざを起こすのはいやだ」

ミスター    「まあ、大事にならないといいがね」

          教会の鐘の音。

ジャック    「……じゃあ、そろそろ帰るよ」

ミスター    「あぁ。いつもありがとう」

 椅子を引く音、足音、ドアを開ける音

      

ジャック    「ミスター、やっぱり、僕と、村に住む気はない?」

ミスター    「……やめておくよ。みんなを怖がらせてしまうからね」

ジャック    「そっか、じゃあ、おやすみ」

ミスター    「おやすみ、ジャック。良い夢を」

   

ドアの閉まる音

M FO

TM ハロウィンっぽい曲(      )

□タイトルコール

ジャック(N) 『ミスターパンプキンのかがり火』

TM FO

□回想、ジャックの幼少期

M オルゴール系(回想入り)

ジャック(幼少)「へえ、大変だったねえ。……うん。へえ」

こども1     「おい誰としゃべってんだよ」

ジャック(幼少)「え、ここに、女の子が」

こども2     「はあ?? どこにいんだよ!」

こども1   「さみしすぎてマボロシみてんのぉ!?」

ジャック(幼少) 「 ねえ、遊ぼう」

こども1      「こっちくんなよ!」

こども2       「あいつに近づくと呪われるぞー!」

ジャック(幼少) 「ぼくもいれてよ」

こども3    「ジャックとは遊んじゃダメってママが言ってるからだめ」

こども2    「おまえのばーちゃん魔女なんだろ?でてけよ!」

ジャックの母親「ジャック! あぶない!」

ジャック    「おかあさ、うあ、あああああああ!」

M FO

鳥の鳴き声。

ジャック    「……はぁ、嫌な夢」

□ジャックの家、朝、キッチン

M 朝(    )

木製ドアをノックする

ドアが強く開かれる 

ロザリア    「おはよう、ジャック! トリックオアトリート!」

ジャック    「おはよう。はい、マフィンしかないけど」

ロザリア    「もー! 朝一で来れば用意してないと思ったのに!」

ジャック    「昨日の夜焼いたんだよ、君、毎年朝くるんだから」

ロザリア    「君なんてやめて、ロザリアって呼んでっていっつも言ってるでしょ!」

ジャック    「(小さく笑いながら)ごめん、ロザリア」

ロザリア    「……なにかあった?」

ジャック    「いや、大丈夫」

ロザリア    「ジャックの大丈夫は信じられない!」

ジャック    「えぇ?」

ロザリア    「いっつもふさぎ込んじゃって! いってみなさいよ」

ジャック    「えっ、いいよ、たいしたことじゃない」

ロザリア    「たいしたことじゃないなら言えるでしょ」

ジャック    「えぇ……」

ロザリア    「なになになーに?」

ジャック    「ミスターパンプキンのことだよ。一緒に村で住めないかなあって」

ロザリア    「あぁー……いい人なのにね。

                         みんな本人としゃべったことないから怖がってるだけだよ!」

ジャック    「そうなんだよ。でもミスターも、村に来たがらないんだ。

                 みんなが嫌がるだろうって」

ロザリア    「ちょーっと年齢不詳でちょーっと変な被り物してて

                  ちょーっと私たちより長生きで、

                         ちょーっと性格ひん曲がってるだけで悪い人じゃないのに」

ジャック    「そう聞くと、だいぶ怖いけどな」

ロザリア    「お祭りの前に寄るでしょ?ミスターの家。私も一緒に行っていい?」

ジャック    「いいよ。喜ぶと思う」

□外、村広場   

M FO

M 牧歌的な曲or祭りのような曲(      )

村の喧噪。木を打つ音、飾りつけの指示の声など

ロザリア    「今年の飾りつけはずいぶん賑やかね!

           いつものうすっくらーい感じよりよっぽどいい!」

ジャック    「そうだね、花火も、やるみたいだし」

ロザリア    「楽しみ! ね、一緒に見ようよ! ミスターパンプキンも誘ってさ!」

ジャック    「うん。みられたらいいね」

ロザリア    「マリアおばあさまはずっと反対していらしたけど

                やっぱりお祭りは華やかでなきゃ!

                   あっ、メリンダおばさーん! トリックオアトリート!」

ジャック    「……そうだよね。みんなにとっては、楽しいお祭りだもんな」

村人1   「おはよう、坊主」

ジャック    「おはよう、おじさん。いつものサンドイッチセットお願いします。

これ、マフィン。いくつか入ってるからおばさんと食べて」

村人1   「ありがとさん。おおい! ジャックからの差し入れだ」

村人4   「ああ、ありがとう。休憩の時にいただくよ」

ジャック  「おばさん、おはようございます。今年もおいしそうなターキーですね」

村人4   「だろう? 大きすぎて運ぶだけで一苦労だよまったく」

村人1    「なあ、今年もちゃあんとあのカボチャ野郎みはっとけよ。

なにか起こってからじゃおせえんだ」

ジャック            「うん、わかった。ちゃんと見張っておくよ。

                大丈夫、あいつにかかってるおばあちゃんのまじない、

                まだしばらく効いてるからさ、どうせ何もできないよ」

村人4                「あんたも、おばあちゃんが亡くなったのは悲しいことだけど、

これで怪しいまじないから解放されたんだからまっとうに生きなよ」

ジャック         「はは、昔教わったけど、全部忘れちゃったよ~。

                それに、今はもう何も見えなくなっちゃったしね。

サンドイッチありがとう、おじさん、おばさん、またね。」

   

走る足音。次第に歩きに。立ち止まる。

ジャック            「……まじないがなくったって、彼は悪さなんてしない。

ミスターパンプキンは、いい人なんだから」

□村のはずれ、森の中。ミスターの小屋の前

    M 祭りのM、遠くからになる。

樹々が風に吹かれるざわつき、鳥の鳴き声など。

木の扉をノックする音。

ロザリア            「こんにちはミスター!」

ジャック      「……出かけてるのかな?」

ロザリア      「さあ…… 心当たりある?」

ジャック       「特には」

ミスター        「やあ」

ロザリア        「きゃあああ」

ジャック        「うわあああ」

ミスター        「失礼じゃないかい君たち」

ロザリア        「みっ、みっ、ミスター! 驚かさないでよ!」

ミスター        「普通に声をかけただけなんだが」

ロザリア             「気配がなかったの!!」

ミスター       「気配、気配ねぇ、難しいことを言う」

ロザリア       「もっと音を立ててお願いだから!」

ジャック       「っはぁ……心臓止まるかと思った」

ミスター      「私は蘇生術は使えないからね、言っておくけれど」

ジャック       「あんなグロテスクな儀式ぜったいやりたくない」

ロザリア       「もうっ! 2人ともそういうジョークはやめて!」

ジャック       「…なんでまだ

こんな明るいのにランタンなんてもってるのさ」

ミスター       「日暮れに間に合わなそうでね」

ロザリア       「なにが?」

ミスター       「ロウソクに火をつけていたんだ」

ロザリア       「なんで? どこの?」

ミスター       「ふむ。それ、食事だろう? 中で話そうか」

 暖炉で火の粉が跳ねる音。

          M 怪しげな曲(ミスターのテーマ)

ミスター            「さて。聞きたいことはなんだい」

ロザリア      「さっきのランタンはなに? 頭蓋骨みたいなの。

カボチャじゃなくてカブ、だったよね?」

ミスター            「よく見ていたね。そう、カブのランタンだ」

ロザリア            「ハロウィン祭のランタンといったらカボチャでしょ?

ミスターのかぶってるやつみたいな」

ミスター      「私のランタンには、昔、悪魔からもらった火が入っているんだ」

ジャック      「へぇ。それは初耳なんだけど」

ロザリア      「悪魔!? 本当にいるの?」

ジャック            「どこで会ったの?」

ミスター            「大昔のハロウィンの日さ。

荒くれものの街だったから、結界なんて張っていなかったんだ」

ジャック            「なるほどね、巫女も神父もいなかったのか……」

ロザリア            「悪魔って魂をとっちゃうんでしょ? よくとられなかったね」

ミスター            「ふふ、ちょっとばかりだまくらかして、

私の魂を絶対にとらないと約束させたんだよ」

ロザリア            「ええ!? 悪魔をだました!?」

ジャック            「この人ならやりかねない…」

ロザリア            「どうやってどうやって!?」

ミスター            「そのとき一文無しだったから、最期にうまい酒を飲ませてくれーっ

てオネガイしたらコインに変身したもんで、

十字架に縛り付けてみたり」

ジャック    「えげつない……」

ミスター    「最期にあのリンゴが食べたいってオネガイしたら

とってきてくれようと木に登り始めたから

リンゴの木に十字架刻んだり」

ロザリア    「悪魔って、案外、やさしいのかな……?」

ミスター    「はは、そいつが若くてアホだっただけだよ、おそらくね」

ジャック    「で、なんでだました悪魔から火をもらうことになるのさ」

ミスター    「あぁ、私が寿命で死んだとき、生前あまりに悪さしすぎたもんで

天国に入れなかったんだ。それでしかたなく地獄の門をたたいたら

そいつがでてきて。私の魂はとらないと約束したから

地獄にも入れないという。しかたないから、

私は現世を魂のまま永遠にさまよう羽目になった。

そのときにお情けで、炎のかけらをくれたんだ。

本当に甘いやつだよ。ふふっ」

ロザリア    「へぇ~」

ジャック    「そのあとおばあちゃんにひろわれたわけ?」

ミスター    「そうだな、マリアが17歳のときだったかな」

ジャック    「おばあちゃんが若かった時なんて想像できない」

ミスター    「性格はあのときから何も変わっていないな。

厳しくてわがままで、自分の思い通りにならないとすぐ機嫌を損ねる」

ジャック    「ロザリア、ミスターはおばあちゃんの実験台にされたんだ」

ロザリア    「実験台?」

ジャック    「師匠の家の本で読んだ蘇生術を試したかったんだって」

ミスター    「蘇生できる対象は、悪霊になっていない魂だが、

そんなものは滅多にお目にかかれない。

魂は基本的には肉体から離れればすぐに天国か地獄に

行くことになっている。現世にとどまりすぎると土地や

生きた人間の悪感情を吸い上げて悪霊になってしまうからだ」  

ロザリア    「ミスターは悪霊にならなかったの?」

ミスター    「この火が焼いてしまうんだよ。悪意も、悪霊も」

ロザリア    「すごいのね、ちっちゃな火なのに」

ジャック    「毎年、村の周りに、蝋燭をぐるっと立てて

この火で灯りをともしてもらっているんだ」

ロザリア    「えー!? ミスターがやってたの? あの蝋燭!

というか単なる飾りだと思ってた……。でも昔からの言い伝えよね?

ハロウィンの夜は蝋燭をつけておきなさいって」

ジャック    「蝋燭結界自体は昔からやってたよ。

ミスターの火を使うようになったってだけ」

ミスター    「クローディス商会がなにやらやらかすようだから、

去年より多めに立てておいた」

ジャック    「……だから日暮れに間に合わないっていってたんだね」

ミスター    「二人とも、用心したほうがいい」

ロザリア    「なんで?なにかおこるの?」

ミスター    「今年は大蝋燭がない。つまり、結界の強度が下がる」

ロザリア    「えっ」

ミスター    「この村は、土地の霊的エネルギーが非常に高いんだ。

だから悪霊が集まりやすい。ハロウィーンの夜は

この世とあの世が近くなるという話は知っているだろう?」

ロザリア    「うん、しってる。あの世から出てきた悪霊に仲間だと思わせるために

                         仮装するんでしょ?」

ミスター    「悪霊は、子供たちと”遊びたい”んだ」

ロザリア    「遊ぶ?」

ミスター    「子供のほうが騙しやすいからね」

ジャック    「……ふん」

ミスター    「……さてジャック」

ジャック    「なんだよ」

ミスター    「マリアが亡くなって、この村には巫女がいなくなった」

ジャック    「だからなんだよ」

ミスター    「私は私の仕事をするが、君はどうする」

ジャック    「僕は魔術もまじないも、もうしないって決めたんだ」

ロザリア    「ジャック……」

ジャック    「もう何年も、悪霊も、連れ去りも、悪魔も、なかったじゃないか」

ミスター    「今年起きないとは限らない」

ジャック    「僕は巫女じゃない。普通の、人間だ」

ミスター    「ジャック、君の仕事だ」

          机に手をたたきつける音。

ジャック    「僕の仕事じゃない!! やりたくない!!

                         僕が始めたことじゃないじゃないか! 僕は、普通でいたいんだ!!」

          ドアを乱暴に開ける音。

   走る音。

ジャック            「(息切れ)はぁ、はぁ、僕は、決めたんだ、独りは、嫌なんだ」

□村の広場、祭り会場   

  

  人々のざわめき。

  教会の鐘。

  打ち上げ花火。

  

ロザリア    「大丈夫?」

ジャック    「今までもなにもなかったし、大丈夫だよ」

ロザリア    「違うわよ、ミスターと喧嘩したままで」

ジャック    「……あんなの喧嘩って言わないよ」

リカルド    「レディース&ジェントルメーン!

                         今宵集まりし化け物の皆の衆! 楽しんでるかな?

あぁ、もちろんかわいい猫ちゃん達にシスターも。

       さぁて今年は生まれ変わったハロウィン祭! 

盛り上がっていこうぜえ!」

ジャック    「……祭壇とは名ばかりのステージだな」

ロザリア    「ねぇ、何か聴こえない?」

ジャック    「何かって何」

ロザリア    「爆発音みたいな…」

ジャック    「どうせ浮かれたやつらが爆竹でも」

      大きな爆発音

      悲鳴

      静まり返る

リカルド    「……おおっとぉ、すこし調子に乗りすぎたお友達でもいたのかなあ?

                         みんな、気にせずたのしも……」

      再び爆発音

      混乱する村人たち

    M 緊迫感のある曲

村人 1     「なんだどうした!」

村人2      「あいつだ!あのかぼちゃ頭だ!」

村人3     「かぼちゃ頭が暴れてる!」

村人1      「とっ捕まえろ!」

村人4      「子供を連れ去りに来たんだわ!」

村人5      「いつかこんなことが起こるんじゃないかと思ってたのよ!」

村人4     「おおこわい!!」

村人2     「やっぱりあいつが連れ去りの悪魔なんだ!」

ロザリア    「ジャック!ミスターだよ!」

ジャック    「……っ」

ロザリア   「ランタンを振り回してる、どうしたんだろう?」

ジャック    「ロザリア、ここを離れよう」

ロザリア    「えっ、なんで!?」

ジャック    「いいから」

二人で走る足音

ロザリア    「何が起こってるの?」

ジャック    「……ミスターが、悪霊を追い払ってる」

ロザリア    「えぇ!?私には見えないんだけど!!」   

ジャック    「たぶん、僕にしか、見えてない」

ロザリア    「ミスターはどうなってるの?大丈夫なの?」

ジャック    「圧されてる…… なんだこれ、悪霊の量が多すぎる」

ロザリア    「助けなきゃ!」

ジャック    「え」

ロザリア    「ミスターを助けなきゃ!」

ジャック    「なにを言って……」

ロザリア    「結界が弱まってるからなんでしょ?私たちはそれを知ってる!」

ジャック    「ここで、動いたら、僕が、あれを見えてることになる」

ロザリア    「そんなこと言ってる場合!?」

ジャック    「僕は、見えないし聴こえないし、まじないもできない、ただの人間だ」

ロザリア    「ジャック、ちょっと何言って」

ジャック    「やっと、みんなに受け入れてもらえたのに、」

ロザリア    「ミスターが危ないんでしょ!?」

ジャック    「でも、」

村人 4     「きゃああああ」

少女        「おろしてっ、やだ!! おばけ!! はなして!」

村人 4     「サーシャ!」

村人3      「悪霊だ! あいつが連れてきたんだ!」

村人2     「はやくあのかぼちゃ頭を捕まえろ!」

ロザリア    「ジャック! ……もう知らない!」

ジャック    「ロザリア! なにをするつもりだ!」

ロザリア    「マリアおばあさまに昔きいたもん!

                         教会の、聖水を、ぶっかけるの!!」

ジャック    「無茶だ! 見えないんだろ!! 君も巻き込まれる!」

ロザリア    「無茶だろうが! サーシャが連れていかれちゃう!」

ジャック    「……ちっ」

□広場

ロザリア    「サーシャ!」

     水をかける音

サーシャ    「きゃっ」

           地面に落ちる音

ロザリア    「大丈夫!?」

サーシャ    「ロザリアおねえちゃんっ……」

ロザリア    「怖かったね、もう大丈夫よ」

村人 1       「何が起こってるんだ!?」

ロザリア    「とりあえず、教会に逃げましょう!」

□教会

重たい木製の扉を開く音

ロザリア    「ジャック! どこに行ってたのよ!」

ジャック    「村の周りの結界を直してきた、あとはミスターが抑えてる部分だけだ」

       くぐもった爆発音

ロザリア    「ミスターを助けに行って」

ジャック    「……でも」

ロザリア    「友達なんじゃないの?」

ジャック    「……僕は魔術は使わない」

           爆発音再び

            村人たちの悲鳴

□村の外側

  

M 緊迫感のある曲

ミスター    「くっ……お前は……」

バアル     「よおよおよお懐かしい匂いだなぁ!どっかで会ったことあるぅ?」

ミスター   「……ないね」

バアル      「あはははは!うーそ うーそ うーーーそ! 変わってないなあ!!

この大ウソつき野郎!」

ミスター    「悪魔に言われてもな」

バアル        「やぁっとでてこられたぜぇええええ!!

お前がここにいたのはずぅうっと前から知ってたんだがなあ!

ジャック・スティィィイイング!?

忌々しい結界のせいで毎年苦い思いをしてたんだが・・・

今年はずいぶんとゆるゆるだなあ?」

ミスター    「何が目的だ、バアル」

バアル       「んんん??お前を痛めつけられればなんでもいいんだけどよぉ!

                    んーんんー?なんだ、その呪い」

ミスター    「あぁ、ちょっとね」

バアル        「殺しに盗みにだましに一生を謳歌したお前が?守りの誓いの呪い?

似合わねぇなあ!」

ミスター    「あぁ、俺もそう思う」

バアル      「さあ、あの日の続きをしようぜ!!」

    M    戦闘系の音楽

爆発音、火の玉が飛んでくる、飛んでくる火の玉をよけるミスター

       炎が地面にあたってはじける

          

バアル        「ははははははは! その程度かよおぉ!!」

ミスター     「少しくらいっ、容赦してくれてもいいんじゃないか!」

バアル        「お前に容赦した結果がこれだろうがよぉ!!

                    めんどくさかったんだよぉあの後!! お前のせいで!」

ミスター    「しったこっちゃないがな!!」

火炎放射のような音 

バアル        「あはははぁ!!俺様の炎が、俺様に効くわけねえだろ!!」

ロザリア    「ジャック!ミスターが、えっと!よくわかんないけど!!

                         なんかすごいやばそう!! ……早く何とかしなきゃ!」

ジャック    「……なんとかったって」

ロザリア    「あんたはミスターを助けられるんでしょ!!

あんたしかできないんでしょ!!」

ジャック    「……いや」

ロザリア    「あんた、友達見捨てたら本当に独りになるわよ」

ロザリア    「ああもう!! 見損なったわ!!」

ジャック    「ロザリア、手伝ってくれる」

□祭壇

          木の階段を上る音

ロザリア    「持ってきたわよ! 大蝋燭、と、ランタン!」

ジャック    「ありがとう」

ロザリア    「何これ? 魔法陣……? って手首!! 血が」

ジャック    「おばあちゃんの魔術ってこういういかにもな感じだから

                         嫌なんだほんとうに……

       真ん中の円の上に置いて」

ロザリア    「わ、わかった」

          木製の祭壇の上に少女が抱える程の大きさの蝋燭を置く。

          爆発音が近づいてくる

ジャック    「いそがなきゃ」   

ロザリア    「ふらふらじゃない、ちょっと大丈夫なの」

バアル      「おいおいおいおい防戦一方かよお! もっと楽しませろよぉ!」

ミスター    「きゃんきゃんとうるさいなッ」

          大きな岩を投げる音、岩が地面にぶつかる音

バアル      「おっとぉ!? あぶねえ! 殺す気か!!」

ミスター    「なにを言ってるんだい、殺す気だよ」

          ぼっ、と火のつく音

ロザリア    「え、青い」

ジャック    「浄化用の炎だからね」

ロザリア    「浄化用?」

ジャック    「見てて……って言っても見えないのか」

ジャック    「地脈に宿る命の流れ、滞りて憤怒の叫び、迷いて嘆きの唄、

 還らせたまえ、冥府への導き、焼き清め流し、

                          我ら生けるものを守りて、再び閉じよう、我誓う、

                          番人との契約を履行する」

魔法陣が発動する音。

ジャック    「ランタンに火を移して!」

ロザリア    「は、はいっ!」

ジャック    「番人の名、ジャック・スティング。巫女の名、マリア・ノーラン

                         あらためジャック・ノーラン、守りの誓い、ここに再締結せり。

                         我、番人に聖火の使用を許可する」

ミスター    「ジャック、遅いぞ」

ジャック    「ロザリア!投げろ!!」

ロザリア    「は!?」

ミスター    「ロザリア!」

ロザリア    「もう!! わかったわよぉ!!」

ランタンをぶん投げる音

        キャッチする音

ミスター    「さて、命乞いの時間は要らんな?」

バアル       「おい、まて」

 火炎放射のような音

ボイスチェンジャーを通したような、小さい生物の高い音

バアル        「くそが! くそが! お前! ぜったいころしてやる!」

ミスター     「ほぉ、バアル、お前、なんだ、こじんまりとした本体だったんだな」

バアル        「うるせぇ! 成体になるのに何百年かかったとおもってんだ!

ニンゲンごときが!」

ぱたぱたと蝙蝠の羽ばたくような音で逃げる悪魔。

ミスター    「さて、のこった悪霊も、こんがり焼かなければ」

ジャック    「カブのランタンは僕が使うよ」

□教会

ロザリア    「みんな!もうだいじょう・・・」

村人 5       「ロザリアちゃん! 無事だったのね、早くお入りなさい、危ないわ」

村人4      「なんなの!? ランタンを振り回して暴れるなんて!

                    やっぱりかぼちゃ頭もあの子も頭がおかしいのよ」

ロザリア     「え、ちがう、違うの、ジャックとミスターが助けてくれたんだよ」

村人2       「あの小僧、ばあさんから怪しいまじないを学んでやがったな!!」

村人3       「今回の騒動はあいつのせいだ!」

ロザリア     「ちがうんだって! 聞いて!」

村人 1       「あのイカレかぼちゃ頭とつるんでるんだおかしいとおもったぜ!」

村人3       「ふたりとも追い出せ!」

ロザリア    「きいてったら!!」

ジャック    「みなさん」

    静まり返る民衆

ジャック    「はあ、信じる信じないは置いておいて、本当のことを話します」

    ざわつく民衆

ジャック    「今回クローディス商会のはからいによって、大蝋燭の祭壇が

ただのステージになり、花火に差し替えられました。

それにより例年僕の祖母であるマリア・ノーランが

密かに構築していた結界のまじないが成立せず、

あの世の扉からやってきた悪霊たちが集まってしまった。

なぜ祖母が口うるさく蝋燭を守ってきたか。

入念に結界をかけてきたか。この村が、出発地点だからです。

ハロウィンの夜、悪霊たちが各地を荒らして回るパレードの」

村人1      「そんなもん、信じられるか!」

村人2      「自作自演だろ?」

村人3     「そうだそうだ!」

ジャック    「……僕の話を信じる必要はありません。でも、今回、

結界をきちんと張らなかったのは僕の責任です。申し訳ありませんでした」

    再び静まり返る民衆

ロザリア    「本当なの、みんな! 私も、見えてなかったけど……」

サーシャ    「しんじる!」

ジャック    「え」

サーシャ    「サーシャ見たもん! おばけ!」

ロザリア    「ほ、ほんとなの!?」

サーシャ    「ロザリアお姉ちゃんが助けてくれたの、

おててがいっぱいあるおばけから」

子供1    「ぼくもしんじる! かぼちゃのおじさんがでっかいコウモリみたいなの、

        おいはらってたのみた!」

子供3    「あたしもみた! がいこつ! こわかった!」

ジャック    「……はは、そうか、子供にだけ見える、ね」

    わいわいと話し合う子供たちの声

ジャック    「信じてもらえなくてもいい! 僕は、

                         おばあちゃんの後を継いで、この地を守るために頑張るので、

                         どうか大蝋燭の祭壇だけは、残してください、お願いします」

村人3        「まぁ、いいんじゃねえか、蝋燭くらい」

村人5       「そうね……いつもあったものが無くてさみしいような気もしたし、

                         ねえクローディスさん」

リカルド     「フン、子供の戯言につきあってられますか」

ジャック     「……お願いします。大蝋燭と、村を囲う蝋燭以外のことは、

                          好きにしてもらってかまいません」

リカルド    「……まあ、事故が起これば興行に支障が出るので。

                         本当にそれで、今回のようなことが防げるのか疑問ではありますが、

来年は試してみる必要はあるでしょうね」

ジャック    「……ありがとうございます」

がやがやと祭りのやり直しをしだす民衆の声、しだいにフェードアウト

    M FO

□ミスターの丸木小屋、室内

ソーサーにカップを置く音

ミスター    「ふう……」

ジャック    「……う」

ミスター    「……ジャック」

ジャック    「……ん」

ミスター    「紅茶が冷めるよ」

ジャック    「え、あぁ、うん。うん?」

    木の扉が開く音

ロザリア    「お菓子分けてもらってきたよ! ……って」

    閉まる音

ロザリア    「……ダレ!?」

ミスター    「私だよ」

ロザリア    「ミスター!? そんな顔だったの!?」

ミスター    「どういう意味かな」

ロザリア    「だって、絶対にかぼちゃの被り物、取らないから、もっと、

                         不細工なのかと」

ミスター    「まあ半死人に不細工も美人もないがね」

ジャック    「……たしかに」

ジャック    「ミスター、あの」

ミスター    「ジャック、ありがとう」

ジャック    「え、な、なにが」

ミスター    「君は、マリアがかけた契約を更新した。番人の使役者の変更だ。

           しかし、致命的なミスを犯したね」

ジャック    「えっ、うそ」

ミスター    「このかぼちゃ、じつは呪いだったんだ、マリアの」

ロザリア    「えええええ!?」

ミスター    「これを被っている限り、一定距離以上マリアから離れられないし、

                         位置をつねに把握されていた」

ジャック    「え、じゃあおばあちゃんが死んでからは」

ミスター    「マリアの墓から5kmしか動けなかった」

ジャック    「先に言ってよ! すぐ解除したのに!」

ミスター    「解除しないほうが懸命だった、ということさ」

ジャック    「どういうこと」

ミスター    「これで私は、どこへでも行ける」

ジャック    「あ……そっか。……でも、番人の契約はのこってるから、

           ハロウィンの時期は、戻ってこなくちゃならない、でしょ?」

ミスター    「まあね」

ロザリア    「じゃあ、ミスター、どっかいっちゃうの?」

    しばしの間

ジャック    「……僕は、ミスターに謝らなくちゃならない」

ミスター    「ふむ?」

ジャック    「村のみんなに嫌われたくないからって、一番の、友達の君を、

                         見殺しにするところだった」

ミスター    「……」

ジャック    「本当に、ごめんなさい。でも、僕はやっぱり、ミスターを、友達だと思ってる」

ミスター    「ほう、それで?」

ジャック    「だから……一緒に住めないかなって、ほんとは思ってたんだけど。

好きなように生きたらいいと思う。

                    ここに、縛り付けられないで。

でも、ハロウィンのときだけ、手伝ってほしい」

ミスター    「……ふう。私も丸くなったものだ」

ジャック    「……」

ミスター    「そんなに心配しなくても、私はまだしばらくここにいるよ。

                         ……君の、友達だからね」

ロザリア    「もお! ひやひやさせないでよー!」

ジャック    「ほんとに?」

ミスター    「まだ一緒にワインを飲んでないじゃないか」

ジャック    「は、はは、ばかだなあ、ミスター」

ミスター    「待つのは得意だ。ばかは君さ。しかし、一緒に住むというのは、

何度も言っているが私は村には」

ジャック  「いや、僕がここに住みたい」

ミスター  「・・・ほう」

ジャック  「今回のことで、僕が魔術つかえるのバレちゃったし。

昔みたいにまた腫物を触るような扱い、正直めんどくさいんだよね。

皆に好かれなくても、ミスターとロザリアが居ればいいかなって……。

だから、あのー、ミスターさえよければだけど」

ミスター  「好きにしたらいい」

ジャック  「はは、ありがとう」

ロザリア    「ねえ、ワインパーティの時は、私も呼んでくれるのよね?」

ジャック、ミスター    「もちろんさ」

□エンドクレジット

ED M ハロウィン調の曲

タイトルコール

ジャックN    『【ミスターパンプキンのかがり火】

《おわり》

18.06.16.

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