概要
自分は「無能力者」だと思って生きてきたカズマ。幼なじみのタクミは”千里眼”で、幼い頃に引っ越したかつての友人を見つけたという。その友人は”未来視”の能力者で、「お国のため」に政府機関に捕えられているようだ。
- 所要時間:約4分
- 人数:2(♂2)
- ジャンル:シリアス、SF
登場人物
- カズマ “反能力”
自分を中心に半径約10メートル範囲内の能力者の能力を狂わせる。常時発動する能力のため本人は自分に能力があると信じられないでいる。 - タクミ “千里眼”
見たいものを見られる。近いものほど鮮明に、遠いものはぼやけて見える。 - ユーリ(名前のみ) “未来視”
未来が見られる。近い未来ほど正確に、遠い未来は解釈が難しくなる。未来視の能力者の中では力が安定し確実性が高いため幼い頃は力を隠していた。
本編
近未来日本
□学校の屋上・昼
チャイムの音。 フェンスに寄りかかるカズマ。
パックジュースをすする音。金属製のドアが開く。
タクミ「カズマっ!」
カズマ「うぉ!?なんだタクミかよ、びっくりしたぁ」
タクミ「なんで教室にいないんだよバカ!」
カズマ「サボりだよ」
タクミ「まあいいやあのね!視えた!」
カズマ「はぁ、なにが?」
タクミ「視えたんだよ!」
カズマ「だからなにが!」
タクミ「ユーリが!」
カズマ「・・・は?」
カズマ「どういう事だよ。ユーリを探すのは
もうやめようって言ってたじゃねぇか」
タクミ「無意識に探してるものってふっと視えちゃうんだ」
カズマ「で、何が視えた」
タクミ「ユーリは、機密情報管理研究局、
未来科”プレコグレット”にいる」
カズマ「・・・嘘だろ?」
タクミ「嘘じゃない。もう、投影機に繋がれてる。」
カズマ「政府お抱えの未来予知能力者は、
ふたりいるだろ既に。なんであいつが」
タクミ「未来の予言は、
3人分ないと信頼性を確保できないから」
カズマ「・・・引っ越したってのは」
タクミ「たぶん、僕らに心配させないための、嘘だろうね」
カズマ「ふん・・・」
タクミ「助けなきゃ・・・・・・カズマ!」
カズマ「”有益な能力は、国のために。”
みんながあいつを必要としてんだ」
タクミ「・・・それはそうだけど!」
カズマ「国際情勢は一触即発、戦争を避けるためには、
予知能力者の存在は必須だ」
タクミ「・・・ユーリじゃなくても、いいじゃないか」
カズマ「あいつほど、遠い未来を正確に視られる能力者は滅多にいない」
タクミ「・・・だからこそ使いつぶされる!
幼馴染が、壊れていくのを黙って見てるのかよ!
国のためなら仕方ないって本気で言ってんの!?」
カズマ「俺が!助けに行けるわけねぇだろ!」
タクミ「っ!」
カズマ「・・・ごめん」
タクミ「いや、僕こそ」
子供たちが遊ぶ声が遠くから聞こえる。
タクミ「予知者は、使い捨てだ」
カズマ「・・・あぁ」
タクミ「電池みたいに、簡単に、取り替えられる」
カズマ「・・・そうだな」
タクミ「ユーリのおばあさん、
どうなったか、覚えてるでしょ」
カズマ「・・・」
タクミ「僕は、友達があんな廃人にされるのを見ているのは、
我慢できない」
タクミ「カズマ、君がやらなくても、僕はやる」
カズマ「お前だってただものすごく遠くまで視えるってだけだろ。
それに、相手は未来視をフル活用できる。
こっちの動きだって筒抜けだ」
タクミ「だから君の力が必要なんじゃないか」
カズマ「・・・俺の力ね」
タクミ「一緒に来てくれるだけでいい」
カズマ「お前の仮説が正しいと俺はまだ信じてないぞ」
タクミ「この作戦で証明できる」
タクミ「君は無能力者じゃない。
君の力は、他人の能力を狂わせる能力だと」
カズマ「俺は、そんな大層な人間じゃない」
タクミ「たのむよ」
カズマ「・・・わかった」
タクミ「ほんと!?」
カズマ「ただし!!」
タクミ「っ?」
カズマ「詳しく聞いてからだ。お前の言う、作戦ってやつを」
<おわり>
18.06.14