お引越し中につき、あちこち工事がおわっておりません(特にショップ)。ネット声劇・個人での練習以外でご利用の際はご連絡くださいませ。

『花を運ぶ人』【♂0:♀2】or 【♂1:♀1】20分

概要

寡黙な郵便屋さん(運び屋さん)と朗らかなお花屋さんの逃避行。

  • 所要時間:約20分
  • 人数:女性2 or 女性1 男性1
    運び屋さんのみ性別変更可。語尾、一人称など適宜変更可。
    性別変更する場合は名前を「ベアトゥス」に変えてください。(台本中指示あり)
  • ジャンル:シリアス、ファンタジー

登場人物

  • お花屋さん(フローレンス)
       いつも笑顔。笑うのに、生きるのにお疲れ気味。
  • 運び屋さん(ベアトリス/ベアトゥス)
    言われたとおりに物を運んできた。だいたいやばいものを運ばされているが、初めて自分から欲しいと思うものができた。

本編

□階段下の花屋、店先

花屋「んー、いい天気!みんなもお日様あびようねー!」

花屋M 『私は、花を売る。町のはずれの階段下の、小さなスペース。そこが私の店だ。
  朝、店先のステージに本日のスターたちを並べる。
  自宅の庭から収穫してくるから、原価ゼロ。
  お目見えして日がたつ花は、水切り、焼き揚げ。
  花の個性に合わせて水揚げを。
  種から丁寧にそだてた我が子たちを、
  まるで初めからそこにいたかのように凛と立たせる。

  こんなご時世に花なんて、と人は言う。
  こんなご時世だから、私は

   ー花屋の背後に着地する運び屋。

運び屋 「っと・・・おはようございます」

花屋M 『花を売っている』

□タイトルコール

花屋N 『花を運ぶひと』

□階段下の花屋、店先、朝

花屋 「(驚き)・・・」

運び屋「えっと、お手紙」

花屋 「びっくりしたー!」

運び屋「・・・」

花屋 「ごめんなさい、もー、郵便屋さん!
  いつも上から来るのはわかってるんですけど慣れなくて!
  こうなんか!気配っていうんですか?
  もっとだせませんか?」

運び屋「・・・気配ですか」

花屋 「難しそうな顔しないでください、
  困らせたいわけではないので」

運び屋「すみません」

花屋 「こちらこそすみません」

運び屋「お手紙です」

花屋 「ありがとうございます!だれからだろう?」

運び屋「あと・・・注文が」

花屋 「いつもの方ですね!」

運び屋「はい」

花屋 「今日は、どんな花束がいいとかうかがってらっしゃる?」

運び屋「・・・元気になる、花束を」

花屋 「かしこまりました!」

花屋M『郵便屋さんは、一日一回、お手紙を届けてくれる。
  配達物がない日も、毎日必ず花束を買っていく。
  町の反対側に住むお客様から頼まれているらしい。
  この町は坂が多く、自転車や車では移動が困難だ。
  郵便屋さんは町中を飛び回り、駆け回って、
  さまざまなものを届けてくれる。
  モノだけじゃない。素敵な気持ちも』

花屋 「おまたせしました!」

運び屋「・・・お代」

花屋 「まいどありがとうございます!と、伝えてください」

運び屋「承りました」

花屋 「あっ、郵便屋さん、待って」

運び屋「はい」

花屋 「はい、これはあなたに」

運び屋「ひまわり、ですか」

花屋 「今朝やっと咲いたの!
  いつもお世話になっているから、おすそわけ」

運び屋「・・・お代を」

花屋 「いいんですよ!こんなご時世ですから、
  花なんて誰も買わないもの」

運び屋「・・・いや、お代を」

花屋 「え、ちょっと、いいってば、結構頑固ねあなた」

運び屋「(お金を押し付ける)・・・」

花屋 「わかりました、わかりました!受け取りますから」

運び屋「では」

花屋M『郵便屋さんは、無口で、無表情で、
  何を考えているかわからない。
  最低限の会話しかしてくれない。
  ただ、花束を受け取るとき、すこし口元を緩ませて
  私の花たちを見つめて、思い出したように唇を引き結ぶ。
  その一瞬を、私はかなり気に入っている』

花屋 「走ってる走ってるー! 器用だなあ」

□花屋、夜

花屋 「今日もお客さんひとり、ん、ふたりか」

花屋M『こんなご時世に、花なんか誰も買わない。
   食べるものすら足りていないのに。』

花屋 「ここのところ毎日鳴るわね、警報。
  早く閉めて帰らなきゃ」

□ 路地裏、夜

   ー扉をノックする運び屋。

運び屋「お届け物です」

運び屋「報酬はあなたから支払われる契約だ」

運び屋「文句は送り主に。では」

□花屋、朝、店先。

花屋 「こーんなに綺麗に咲いたのに、
  だれもあなたたちを見てくれないなんて」

   ー遠くから鈴の音が聞こえる。

花屋 「鈴?どこから・・・」

 ー花屋の目の前に着地する運び屋。

運び屋「・・・っと、おはようございます」

花屋 「びっ・・・くりしたー!!もう!郵便屋さん!」

 -運び屋、手元の鈴を鳴らす。

運び屋「気配をと思って、鈴。」

花屋 「うーーん、あってる、あってるんだけど!」

運び屋「今日はお手紙はありません。花束をひとつ」

花屋 「かしこまりました。
  ・・・ねえ、いつも買ってくださる方、どんな方なの?」

運び屋「お客様の情報はお教えできません」

花屋 「そうだよね、こんなご時世だしね・・・。
  まあ、きっと素敵な方には違いないわ。
  今日はどんな感じがいいかな?」

運び屋「・・・爽やかな感じで」

花屋 「はーい。少々おまちくださいませー」

   ー花束をつくる花屋。

花屋 「お待たせしました!どう?」

運び屋「うん・・・素敵だ」

花屋 「ふふ」

運び屋「お代を」

花屋 「ありがとうございます!
  郵便屋さん、良い一日を」

運び屋「・・・あなたも」

花屋 「(驚き)」

   -駆け出て段差を飛び降りる運び屋。

花屋 「いま、わらっ、笑った!」

花屋 「ふふ、ふふふ、なに、ぎこちなさ過ぎでしょ、
  笑い慣れてないんだ」

 -警報が鳴る。

花屋 「また戦闘機・・・空はこんなに美しくて青いのに、
  笑うことすら許してくれないのね」

花屋 「あーあ。今日は厩舎(きゅうしゃ)行って
  馬糞でももらってこようと思ったのに。また明日かな」

□夕方、店先

花屋 「今日はお客さんが4人。お葬式のお花、
  お葬式のお花、あと、お葬式のお花」

花屋 「・・・私、花屋ですから。祝う花も、
  悼む(いたむ)花も、恨む花も、包むけど」

運び屋「こんにちは」

花屋 「郵便屋さん!めずらしいですね、
  一日に二回もきてくださるなんて」

運び屋「・・・あの」

花屋 「はい?」

運び屋「・・・お疲れ様です」

花屋 「え?あっ、ちょっと!」

花屋 「それを言うためだけに来たの?・・・おかしな人」

□朝、畑

花屋M『畑にいるとき、私は一番安らぐ。
  この灰色の時代に、色に囲まれていられるこの場所。
  多くの命が失われゆくこの時勢に、
  日々芽吹く生命力にあふれたこの場所。
  祖父母が世界を旅している間に、
  あらゆる土地で譲り受けた種たちを増やし、
  育て方を書き留めた膨大な量のノートを覚え、
  詰め込んだ知識と技術で丁寧に世話をする。
  そうすれば、花は応えてくれる』

花屋 「あの人にも、みせてあげたいな」

運び屋「お花屋さん」

花屋 「(驚き)」

運び屋「(振り返った花屋に驚き)」

花屋 「郵便屋さん!?ど、どうしてここに!?」

運び屋「上から見えてたので」

花屋 「な、なんだ、知ってたんですか、ここ」

運び屋「ずいぶん前から」

花屋 「それで、なにか御用が?」

運び屋「はい。・・・ここの種は、何種類ありますか」

花屋 「え?えっと、百五十種類くらいかしら」

運び屋「・・・一種類につき、どのくらいあれば、繁殖しますか」

花屋 「どうだろう、種類にもよるけど、百粒もあればとりあえずは」

運び屋「(考え込む)」

花屋 「郵便屋さん?」

運び屋「今日の夜、お店に寄りますので、
  それまでに各種百粒ずつ、
  持ち出せるよう準備できますか」

花屋 「え?ど、どういうこと?なんで?」

運び屋「時間がないので詳しくは夜に。
  かならず、用意しておいてください。お願いです」

花屋 「わ、わかりました」

□夜、店

   -テーブルにカバンを置く花屋。

花屋 「これで、全部」

   -鈴の音の後姿を現す運び屋。

運び屋「こんばんは」

花屋 「・・・こんばんは」

運び屋「準備は」

花屋 「できてますけど、
  どういうことかきちんと説明してくださらない?」

運び屋「・・・」

花屋 「説明していただかないとここから動きませんからね」

運び屋「長くなりますので座りましょう」

運び屋「まず、私はあなたに謝らなければなりません。」

花屋 「え?」

運び屋「私、郵便屋ではないんです」

花屋 「そうなの?」

運び屋「運び屋です」

花屋 「はぁ、大して変わらない気がするけど」

運び屋「運び屋は、頼まれればなんでも運びます。
  多くの人が私に運ばせるのは、秘密の手紙、
  薬、武器、火薬、爆弾、毒入りのパン。
  そういった危険なものです」

花屋 「・・・軍の人なの?」

運び屋「いいえ。ただの運び屋です。
  足がつかないように私を使います」

花屋 「・・・そう」

運び屋「あなたと、彼女だけが、
  私に美しいものを運ばせてくれた。
  だから、あなたを救いたい」

花屋 「ちょっとまって、彼女って誰?」

運び屋「もう一つ謝らなければなりません。
  あなたに渡すべき手紙があります。どうぞ」

花屋 「これは・・・」

運び屋「町はずれに住んでいる老婦人が、
  亡くなる前に私に託したものです。
  名も知らぬ花屋さんへ、と」

花屋 「・・・これ、日付が、一年前じゃない」

運び屋「はい」

花屋 「毎日花束を買っていたのってこの方?」

運び屋「はい。」

花屋 「六月十二日・・・彼女が亡くなってからは?」

運び屋「私が」

花屋 「あなたとこの方のおかげで、
  私は毎日パンが買えたわけね」

運び屋「申し訳ございません。私は怖かった、
  ので、隠しました。彼女の死を知ることで、
  貴方の笑顔が曇るのではないかと」

花屋 「素敵な方だったんでしょう?」

運び屋「・・・はい」

花屋 「文字から分かるわ。
  それに、毎日花束を飾る方ですもの」

運び屋「・・・私は、本当は彼女も助けたかったのだけど、
  できないので、あなたと、
  種を、ここから運びだします」

花屋 「・・・誰からの依頼?」

運び屋「いえ、私の意志で」

花屋 「私は、いかない」

運び屋「どうして」

花屋 「お花たちを見殺しにできない」

運び屋「・・・これはまだ私しかしらない情報です。
  ここは二日後に空襲を受ける」

花屋 「・・・そうなの」

運び屋「だから、あなたを逃がします」

花屋 「・・・私は、いかない」

運び屋「なぜ」

花屋 「お花のため」

運び屋「種があれば、花はまた咲く!」

花屋 「言い訳は良くないわね。
  私が、生きていたくないのよ。
  この世界に」

運び屋「・・・なぜ」

花屋 「花のように、笑っていようと
  思ってたんだけど。苦しくても、
  大変でも、笑顔でいようと
  思っていたんだけど」

花屋 「もう疲れちゃった。
  ・・・だから、お花たちと一緒に」

運び屋「では、私も言い訳はやめます」

花屋 「え?」

運び屋「あなたが何と言おうと、
  私はあなたを運び出します」

花屋 「何言ってるの?」

運び屋「これはあなたのためではない。
  私のための行動だからです」

運び屋「私があなたを手放したくない。
  みな私を道具だと思っている。
  私に笑いかけたのはあなたと彼女だけだ。
  私に命を奪う道具や
  戦争を推し進める密書ではなく、
  美しく命あるものを運ばせてくれたのは
  あなたと彼女だけだ。
  彼女がいなくなったので、
  私が守るべきものはあなたしかない」

花屋 「・・・寡黙な人と思っていたら、ずいぶんおしゃべりね」

運び屋「すみません」

花屋 「なんて自分勝手なの」

運び屋「すみません。
  あなたが心から笑っていないことには気づいていました。
  彼女からの依頼があったときだけあなたは穏やかに笑う。
  だから彼女の死を知らせることができなかった。
  ここにいては、空襲を免れてもあなたは死んでしまう。
  だから、あなたの心が枯れないように、
  種も一緒にもっていくので、咲くのに疲れたら、
  私が水をやり光に充てるから・・・あの」

花屋 「なあに?」

運び屋「私のために咲いてほしい」

花屋 「・・・プロポーズ?」

運び屋「違います」

花屋 「・・・分かったわ。私の負け。
  どこへつれてってくれるの?」

運び屋「花屋が必要な街へ」

花屋 「最高」

運び屋「お花屋さん、では」

花屋 「フローレンス。私の名前。あなたは?」

運び屋「・・・ベアトリス (男性の場合:ベアトゥス)」

花屋 「素敵な名前。幸せを運ぶ人」

運び屋「あなたこそ」

【終わり】

2020.05.30
検索用:はなはこ

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